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虎威先生にベッドに寝かされて大人しく診断を受けた。
一通り真剣に診察してくれて終わったのは良いけど何で頭抱えて溜息吐くんだよ。
獅希も呼んで2人でひそひそ話してるし。
もしかして、実は重病なのか?
まさか入院かっ…!
「汰狼ちゃん…アンタ知恵熱よ」
「知恵、熱…?」
「そう。子供が知恵をつけ始めた頃に起こす発熱とよく似てるのよ。頭を使い過ぎて疲れた時とかにも発熱するって言われるわねぇ」
重病じゃないのは分かったけど知恵熱って。
俺は子供が起こすような病気になったのかよっ!
恥ずかし過ぎるだろ!
「もぉう、その歳で知恵熱とか可愛いじゃなぁあいっ!!子供のような純粋さがあるお陰ねっ!」
「うぐっ!」
すっかり元に戻った虎威先生がダイブして抱き着いてくる。
すんげぇ苦しいんだけど。
虎威先生、俺よりデカイって事忘れてんじゃねぇのか?
「先生、汰狼が死にそうですよ」
「あぁんっ、汰狼ちゃぁんっ」
何とか獅希が引き剥がしてくれて助かった。
マジで意識飛びそうになってたから助かった。
知恵熱より虎威先生の抱擁の方がキツイ。
「じゃあ虎威先生、俺部屋で寝てるっす」
「その方が良いわねぇ。獅希君についてってもらいなさい。ああ、それと」
獅希の手を借りてベッドから起き上がって帰ろうとしたらガッチリ後ろから抱き着かれた。
動けねぇし然り気無く腹撫でてくるし。
「ちゃあんと診察料、体で払ってねぇ?」
「……え?」
「最初に言ったでしょぉ?」
ま、まさか本気だったのか!?
俺、うんとか言ってねぇのに!
見てもらった時点で払うの決定だったのか!?
「まぁ、獅希君が怖いから今回は熱下げて部活頑張ってくれたらチャラにしてあげるわぁ。ちゃんと功績残すのよっ」
「は、はい…」
「汰狼行くぞ。先生、有り難うございました」
獅希が居てくれて本当に助かった。
虎威先生に頭を下げてから獅希に手を引かれて部屋に帰った。
「汰狼、本当に大丈夫か?」
「大丈夫だって。清隆寺も居るし。今日は本当に有り難うな。じゃあ」
心配そうにする獅希を見送って部屋の中へと入る。
これ以上迷惑掛けたくねぇから清隆寺が居るとか言ったけどあいつ今日は居ねぇんだよな。
居ても熱出したと分かったら移すなとか言って部屋追い出しそうだし。
「……水飲も」
重い足を引き摺って冷蔵庫を開けて小さなペットボトルを取り出して水を飲んだ。
冷たくて美味い。
『頭を使い過ぎて疲れた時とかにも発熱するって言われるわねぇ』
そういや、最近頭使ってんな。
しかも清隆寺の事ばっかだ。
あいつに嫌われてんのに考えてんのはあいつの事ってどうなんだよ。
あー頭痛ぇ。
「薬飲も…」
薬を取りに行こうと思って一歩踏み出したら目の前が歪んだ。
何だこれ。バランスが取れねぇし気持ち悪ぃ。
遠くでペットボトルが落ちた音がしてる。
ああ、床が冷たくて気持ち良い。
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mokuji]