肉食系ラビット | ナノ
初めての食事

 


獅希を見送って部屋にエプロンを直して出来上がったとんかつを並べてたら玄関が開く音が聞こえた。
出迎えて良いもんなのか…おかえりぐらいは言って良いよな。

「おかえりなさ…」

顔は見ないように気を付けて声を掛けようとしたのにいつの間にかもう直ぐそこにいる。
しかもかなり不機嫌な顔で。
おまっ、怖ぇぞその顔!
俺の目付き云々の前に自分の顔見ろ!
俺以上に目付き悪ぃから!

「……」

無言は止めろよ無言はよぉっ。
俺はお前の所為で発言権ねぇんだからせめてお前が喋ってくれよ。
何だ?実はとんかつ揚げ立てじゃねぇのがバレたか?
ちゃんとレンジでカラッと設定でチンしたぞ。

「これで全部か?」

「は、はい」

「フン…次は汁物も用意しろ」

ただそれだけを残して清隆寺は部屋へと戻った。
まさか、不機嫌だったのは味噌汁が無かったからか?
明日、獅希に味噌汁の作り方教えてもらおう。
寧ろ、作ってもらおう。


清隆寺が部屋に戻ってる間に気付いたんだけど俺、一緒に飯食えねぇ。
だって、清隆寺の飯は獅希のとんかつだ。
でも俺のはただの揚げた肉。
バレる。俺が作ってないのバレる。
まぁ、あいつの性格だ。一緒に食おうなんて絶対言わねぇよな。




「おい、テメェは食わねぇのか?」

「へ?」


着替えて出てきた清隆寺の言葉に驚いた。
まさか俺の事を気に掛けてるのか?
それとも一人で飯食うのが嫌…とかはねぇか。

「さっさと答えろ」

ちょっと答えるタイミングが遅れただけなのにもう機嫌が悪そうだ。
お前短気すぎるだろ!

「おっ、おお俺はそのっ…下僕!下僕なんで一緒に食うなんてそんな…」

今この瞬間だけ下僕で良かったと思う。
これなら最もらしい理由だろ!
ここで俺が下僕アピールをしたら俺様清隆寺の事だ。
下僕なんかと一緒に飯食わねぇぐらい思う筈だ。
……ちょっと寂しいけど。
でも揚げた肉を誤魔化す事が出来る!

そんな自分の言い訳に自画自賛してたら清隆寺が指を差す。
俺をじゃねぇ。
綺麗な笑顔を浮かべて清隆寺の向かい側の席を指差してる。

「安心しろ。今の俺様は機嫌が良い。早く自分の飯を用意して座れ」

お前、さっきまで味噌汁無くて機嫌悪かったじゃねぇか。
部屋で一体何があったんだよ。

無駄に綺麗な笑顔に今は恐怖しか感じられなくて大人しく自分の飯も用意して向かい合うようにして座った。


 


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