肉食系ラビット | ナノ


 


「な、なぁ獅希」

「何だ?」


何だじゃねぇよ。
まぁ確かに、確かに俺はお前に手伝ってくれって言った。
1人じゃ無理だから手伝ってくれって言った。
でも、

「これはおかしいだろ」


今の状況を言うと、俺の手付きがあまりに悪過ぎて心配した獅希が後ろから俺の手に手を添えてる。
所謂、二人羽織りの状態。
俺の肩に顎乗せて指示出してくれてんのは良いけど近ぇから!
たまに耳に息がかかってビクッてなるし。
何よりも動きづらい。


「同じ視線から見る為にはこうするしかねぇだろ」

「そりゃそうだけどよぉ」

広いシステムキッチンにデカイ男2人がくっついて料理してるっておかしくねぇか?
しかも片方はフリフリの白エプロンだぞっ!
確実におかしい。

「それより、早く作らなくていいのか?」

「はっ!」


リビングにある壁に掛かった時計を見たらもう6時前だった。
ヤバイ、清隆寺が帰ってくる。
このエプロン姿、清隆寺だけには見られたくねぇ…!

「よし、獅希。手解き頼むぞっ」

「了解」

例え変な光景でも良い!
今は帰宅してくる魔王から命を守る為にも早く料理を作らねぇと。
明日を無事迎える為に頑張れ俺!













「同じように作った筈なのにな」

背中から離れた獅希がぼそっと呟く。
言いたい事は分かる。皆まで言うな。

獅希に手解きしてもらってとんかつを作った。
ちゃんと目の前に置いたメモと俺の手に添えた獅希の手に導かれて作った。
筈なのに。
これはもう、とんかつっつーより揚げた肉だ揚げた肉。
何故か衣が全部剥がれちまった。
半分に切ったら中までちゃんと火が通ってたし俺はとんかつを作ったんじゃねぇ。
肉揚げたんだよ。
焼くのは失敗したけど揚げるぐらいは出来たんだよ。
揚げる才能はあるじゃねぇか俺。
なんて、現実逃避をしてたら獅希が顔を覗き込んできた。

「おい、大丈夫か?」

「あ、ああ…」

「飯、どうするんだ?」

「取り敢えず、清隆寺には獅希が作ったとんかつ食わせる。獅希、手伝ってくれたのに悪ぃな」

教えてもらっといて失敗するなよ俺。
これじゃあ調理実習でテーブル拭きにもなるわ。
昨日よりもへこんでたら獅希が宥めるように頭を撫でてくれた。

「最初は誰でも失敗する。これからも料理に付き合ってやるから」

獅希、お前優し過ぎるだろ。
不覚にも涙が滲みそうになったけど堪えて笑った。

「ありがとな。獅希も飯あるんだし、帰って良いぞ」

これ以上付き合ってもらうのは悪いから心配する獅希を強引に玄関まで見送った。
その後直ぐに清隆寺が帰ってきても良いようにエプロンを外して獅希が作ったとんかつを温め直した。
真ん中の隙間寄せたら食ったのバレねぇよな。


 


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