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「獅希、良いのか?」
凄く有り難い申し出だけどこいつはこいつで予定があるかもしんねぇし確認してみる。
予定あっても獅希の性格なら困ってる俺の面倒見ようとしそうだし。
「料理ぐらい別に良いって。でもその代わり、これ貰うからな」
獅希の返答に安心したけど袋の中から新発売のパイで紅茶風味のチョコを挟んだ菓子を取られて無意識に眉が寄る。
あれ、地味に食うの楽しみにしてたのに…!
人気でやっと売ってる所を見つけたから食いたい。
もう今日には売り切れてまた入荷待ちになるに決まってる。
獅希も人気っぷりを知ってて選んだのか…こいつ顔に出ないから知ってんのか知らねぇのか分かんねぇ。
他ので妥当してもらうか。
でも、獅希もこれが食いたくて他の菓子なら手伝わないとか言われたら困る。
俺一人で飯を作ったら確実に今日で人生が終わる。
「……分かった」
断腸の思いで俺は菓子を我慢した。
何で清隆寺の為にここまで…そっか、自分の命の保証の為だよな。
クリームパンを食べ終わって今度はメロンパンを頬張りながら楽しみにしていた菓子を食べる獅希の姿を羨ましそうに眺めた。
授業も終わり、遂に放課後。
戦いの時は来た。
一先ず着替えてから俺の部屋に集合する事になった。
昨日の清隆寺の発言を思い出して今日はジャージを着てる。
ジャージはズボンの裾に合わせたから上はデカめで腰のラインは分かんねぇしチャックを上まで上げたら首元も隠れる。
冗談とは言え清隆寺の発言は心臓に悪い。これで対策はばっちりだな。
「……何でこんなに肉ばっかりなんだ」
ジャージに七分丈のシャツとラフな姿の獅希が冷蔵庫を見て思わず呟いた。
そうだよな、こんなに肉だけあったら驚くよな。
「確か清隆寺って肉食わないんじゃなかったのか?」
「それがデマらしい。肉大好きなんだと」
へぇとかあまり興味無さそうに答えて食材を確認してる獅希の横顔は男前だと思う。
今のお前は魔王を倒しに向かう勇者みたいに見えるぞ。
「よし、とんかつ作るか。揚げるだけだから簡単だろ」
とんかつ用の豚肉のパックを持って俺に確認してきたんだけど頷けねぇ。
俺、揚げるよりも簡単な焼くだけの作業を失敗したんだよ。
そんな不名誉を言える筈も無くただ無言で豚肉のパックを受け取った。
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mokuji]