声に乗せて | ナノ


 


段々徹との距離が縮まってきた。
ああ、そっか。
今、ご褒美のキスをしようとしてる?
それなら目を瞑らなきゃ。


「………んー?」

キスするんだと思ったから目を瞑ってたのに中々唇が来ない。
いや、キスを待ち望んでるとかそんなんじゃないからねっ!
でもおかしいなぁと思って目を開けようとしたらピロリーンって音が。

「……燈瑪可愛い」

自分の携帯画面を見ながらうっとり呟く徹。
さっきの音からしてもしかしなくても今の顔撮った!?
何してんだよぉっ!

「け、消せっ」

「やーだ」

携帯を奪おうと手を伸ばしたらそのまま抱き締められた。
生徒会に囲まれてたのを見たら徹ってちっちゃいなぁとか思ったけど俺よりでかいんだよね。
簡単に抱き込まれてしまった。
これじゃ携帯奪えない…!


「あのさ、俺がご褒美にキスしてもらったら桜慈と陵にもキスするって事になっただろ?」

「え?あー…そうだったね」

これも忘れてた。
徹のご褒美にごねた2人を宥める為にあの2人ともキスする事になったんだった。
それなら、徹にした数だけするって事で…お、俺どんだけキスしなきゃいけないの!?
唇腫れちゃいそうっ。

「だから、キスしない」

「へ?良いの?」

「うん。皆にするならご褒美じゃないし」

ちょっと拗ねて唇尖らせてる。
言われてみたらそうだよな。
よくよく考えたらあの2人は何もしてないしー…

「だから、キスじゃなくて一緒に飴を食べる、にして?」

「それで良いの?」

にっと笑いながら頷いてるけど一緒に飴を食べるだけって…俺にも飴くれるのかな。
それとも俺も飴を用意するべき?
よし、飴を用意しよう。

「良いよ。俺も飴用意するね」

「やった!じゃあ早速」

嬉しそうな徹を不思議な気持ちで眺める。
だって飴食べるだけで今日1番の笑顔を見せるなんて。
徹が狭い個室の中でごそごそと動いてポケットから苺味の飴を取り出した。
懐かしいなぁ。この飴好きだった。
でも1個しかない。
あれ?俺のは?

「燈瑪」

「何?」

「これはキスじゃなくて、一緒に飴を食べてるだけだからな?」

徹は飴の包みを剥がして笑みを浮かべて念を押してくる。さっきの笑顔とは違ってその…格好良い顔して笑ってる。
いや、普段も格好良いけど何と言うか…
その笑みを見ていたら徹の唇が触れてきた。
あれ?これはキスじゃないの?


 


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