忘れてた事
無事補習をずらしてもらえて意気揚々としてたけど、火曜か。
来週ライブだから明日明後日は1日中練習する筈。
なら今日と月曜しか勉強出来ない。
頑張らないと…!
「燈瑪」
「!?」
一人、頭の中で予定を立ててたら急に背後から口許を押さえられて近くのトイレに引き摺り込まれる。
いきなりの事で抵抗出来ないまま個室に押し込まれた。
何事!?
まだ口許を手で押さえられたまま一緒に個室に入ってきた相手を見つめる。
本当に赤髪がよく似合う。
「んっ…徹?」
「しっ」
徹は自分の口許を人差し指で押さえてる。
大人しく静かにすると直ぐに廊下が騒々しくなった。
走り回る足音に何人かの声。
暫くトイレの周りが煩かったけど次第に音は遠くなっていった。
「はぁ……やっと撒けた。あいつらしつこ過ぎ」
「追われてたの?」
「うん、そんな感じ。変装解いてから色んな奴らに囲まれたりしてさぁ…疲れた」
本当に疲れた顔をして徹が抱き着いてきた。
そういえば、王道転校生って最終的に生徒会どころか学校中の人気者になるんだっけ?生徒会みたいなのがいっぱい…それは疲れるよ。
「徹ごめんな。お疲れ様」
セットを崩さない程度に頭を撫でて抱き締め返す。
元を糾せば俺の所為でこんな事になったんだよな。
本当申し訳無い。
でも確か、お詫びに何か決めたような…
「燈瑪」
撫でていた筈の頭は俺の肩から離れて目の前に徹の顔がある。
うん、美形。
この顔に皆釣られたのか…でも性格は王道と違って本当に良い奴なんだよ。
優しいし友達思いで性格も男前だし。
言いたいけどそれを言っちゃ駄目だよね。
折角の計画を俺が台無しにしちゃ駄目だ。
少しの間、徹を見つめていたらほっぺをペロッて舐められた。
と、徹!?
疲れておかしくなった!?
落ち着いて!
「ご褒美」
「へ?」
「だから、ご褒美。頑張ったらキスしてくれるって言った」
舐められた場所を押さえて情けない声が出た。
そうだ。忘れてたのはそれだ。
確かに徹が頑張ったらキスするって約束した。
結局最初1回しかしてないけど。
「今までの分も纏めてしてもらうよ」
「あー…」
いや、この際もうキスは良いんだよ。
ただ纏めてって…一体何回キスするんだろ。
それにやけに徹が近い気がする。
個室でももう少し距離取れるって!
[
*prev] [
next#]
[
mokuji]