声に乗せて | ナノ
side:仁志

 


絶対あの女が関わっていると思ったのにどういう事だ?
身内に女しか居ないなんて。


「おい、ちゃんと調べたんだろうな?」

「勿論です。アンタは俺の腕を知ってるでしょ?正式に調べた結果、橘桜慈の身内には男性は存在しません」

「くそっ…」

「おっかしぃなー。髪の色とかマジ白桜ちゃんそっくりだったのにー」

「暗い所で見たんでしょう?アンタの見間違いですよ。それか単なる偶然か」

「そっかなー」


液晶を覗き込み調べさせた情報に目を通す。
確かに何処をどう見ても兄弟どころか同年代の男の名前は無い。
アイツを、白の王子だのと噂されているアイツを捕まえれば情報が手に入るかもしれねぇのに。

「でもまさか仁志さんまで転校生の為に白の王子様を探すなんて…ねねっ、王道転校生に惚れちゃった!?俺がアドバイスしてあげよっか?」

「いらねぇ。あんな煩い奴に惚れてない」

「じゃあ何故探すんですか?」

「それは…姫の為だ」


帝が賭けを持ち掛けて直ぐ転校してきた渡部徹。
確かに好みに近い声だった。
しかも当たり前のように俺達の傍に居る。
出来過ぎだ。
身元を調べても兄弟は居ないけど、送り込んでくるなら名字ぐらい変えるんだったな。
アイツは確実に真白さんの弟だ。
大方、アキさんが情報を弄ったんだろ。
任務は俺達の関心を姫から逸らすとかそんなもんだろ。
何であんな変装をしたのかは分かんねぇが蓮華と勝海は落ちた。
あんな奴を送り込むなんて流石だ。
そこまで計算して送り込んだ徹と一緒に居た白の王子。
しかも素の姿で会う程の仲だ。
姫の事を知ってる筈。


「早く会いてぇ…」

復活したとしてもまた姿は見せねぇんだろう。
俺が知っているのは声だけ。
声だけでも十分な存在感。
ライブ中たまに発言する少しずれた言葉。
場を和ませる声。
そして声に乗せられた、歌に対する想い。
姫の全てが愛おしい。


「絶対奪ってやる」


姫の全てが欲しい。


 


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