声に乗せて | ナノ
大騒動の始まり

 


今日からまた学校かぁ。
まぁ、これから週末は呼び出されて練習するんだろうな。
練習が楽しみだ。
早く週末にならないかなぁ。
まだ今週が始まったばかりなのにそんな事を考えながら着替えてリビングに向かった。

「陵、おは…あれ?」

先に起きてコーヒーを飲んでる筈の陵が居ない。
いつもなら居るのに…トイレかな?
俺もコーヒーでも飲もうかなってキッチンに足を進めようとしてテーブルに置いてある一枚の紙に気付いた。

「んー?……『先に行く』」

陵は達筆だなぁ。
これだけの言葉なのに綺麗に見える。
でも先に行くって珍しい。
……あっ!

「今日、新入生歓迎会だ!」

そうだった!
今日は放課後の授業は無くて新入生を歓迎する軽い立食パーティーがある。
これだけなら面倒だなぁとか思うけど思い出してすっごくワクワクしてきた。
だって新入生歓迎会は紅百合女学院と合同で行うから。
新入生歓迎会だけじゃなくて他にも年間行事は交流の為に紅百合と合同のものが多い。
つまり!今日は久し振りに女の子な桜慈が見れる…!
桜慈の制服姿は春休みに見て以来だなぁ。
赤いおっきなリボンが凄く可愛かった。
いつものボーイッシュな桜慈も可愛いけどやっぱり女の子っぽい桜慈も見たい!
桜慈は新入生代表だったし生徒会長だし皆の前でスピーチするんだろうなぁ。
桐野ぐらいには俺の自慢の妹ですって教えちゃおっかなー。

「ああ、そっか」

今日、新入生歓迎会だから陵は風紀で呼び出されてんのかも。
俺も今日まで忘れてたし、陵もうっかり忘れてたのかもな。
よし、今日の授業は全力で頑張ろう。
そして桜慈の兄として恥ずかしくないように振る舞うぞー!






「なーんか、皆浮き足立ってるなぁ」

人の事は言えないけど、教室に向かうまでに見た生徒達はひそひそ話したり顔を赤らめてたり…ああ、今日の新入生歓迎会で生徒会のメンバーが見られるからか。
この学園の人達で紅百合の子達に会えるのを楽しみにしてるのって1割ぐらいだろうし。
俺は生徒会なんかより桜慈の制服姿の方が…

「橘ー!」

「ん?ああ、おはよう」

桐野が後ろから呼びながら近付いてくる。
いつもなら桐野を見たら皆熱い視線を送る筈なのに…やっぱり今日はおかしい。
何か嫌な予感してきた。

「おはよ。お前、土曜の噂知ってるか?」

「土曜、の?」

どんな噂だろ。まさか、俺が俊稀さんを買収したとか噂が流れてるんじゃ…!

「やっぱお前は知らないか。土曜に噂の王子様が私服姿で目撃されたんだと」


その言葉を聞いて顔が引き攣る。
万が一に備えて桜慈を学園から離れた所で降ろしたのに見られたんだ。
それなら必然的に…

「しかも、あのお騒がせ転校生と一緒だったらしいぞ」


ああ、やっぱり。


 


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