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陵も車の傍に立つ人が誰か分かって溜息を漏らした。
出たくないなぁってドアを開けるのを渋っていたら外から窓をノックされる。
早く出てこいって事か。
意を決してドアを少し開いたら直ぐ様外からドアを引っ張られた。
「風紀委員長様とその弟君ともあろう方が門限を破られるだなんて…」
わざとらしい敬語だなぁ。
眉毛ピクピクさせてるし相当お怒りみたいだ。
「今回は大目に見ろ」
「んな事出来るわけねぇだろ!」
車から降りようとしてる俺を後ろから抱き締めながら陵が言った言葉についに彼は素に戻ってしまった。
やっぱ駄目かぁ。
「アンタが門限破ってどうするんすか!」
確かに風紀委員長が門限破っちゃダメだ。
彼、大下 俊稀(おおした としき)さんが言う事はごもっともだよね。
彼は抱かれたいランキングえーと、5位だったかな?
まぁ、取り敢えず上位で副風紀委員長をしてる。
例え頭の右半分が金髪でも。ちょっと桜慈に似てる金髪だから俺は好きだなぁ。
もうちょっとピンクっぽかったら…
「おい、弟。何で遅れたんだ」
「えっ…と、んー…?」
急に話題を振られて我に返った。
でもバンドの練習してきましたなんて言えないから誤魔化すように笑いながら首を傾げる。
ごめんなさい、答えられません。
「はぁ…取り敢えず陵さんは始末書っす。お前には愛の鉄拳を食らわせてやるから降りろ」
「えっ!?」
「俊稀…燈瑪を殴る気か?」
「例外は認めないっす」
愛の鉄拳とは学校名物の1つでもある大下さんのパンチだ。
風紀を乱した人にそう言って殴るんだけど…ま、まさか俺が食らう日が来るなんて!
た、確かに遅れた俺達が悪いけど怖いよ。
でもここは男として潔く…
「そうか…折角燈瑪がお前も呼んで飯を食おうって言ってたんだけどなぁ…俊稀の拳食らったら料理どころじゃねぇし、また今度にするか」
「俺を…?」
え?陵、何の話?
俺そんな事1回も言った覚えが…
「おい」
「はいっ!」
「俺は陵さんと弟が部屋にちゃんと帰るか見届けるから後は任せたぞ」
大下さんが他の風紀委員の人に指示してる。
あれ?もしかして俺殴られない?
「俊稀は燈瑪の料理が好きなんだと」
「そうなの?」
そんなの初耳だ。
陵の耳打ちに驚きつつ大下さんの方を見たら手を差し出された。
俺の方は見てないけど。
そろそろ降りなきゃだし手を退けるのも失礼だから素直に手を握って車から降りた。
「お前が食ってほしいっつーなら食ってやらねぇ事もない」
「あ、ありがとうございます」
取り敢えず愛の鉄拳は回避出来たけど。
門限破る風紀委員長に買収される副風紀委員長って、うちの風紀委員会は大丈夫かな。
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mokuji]