声に乗せて | ナノ


 


「あ、朝早くない?」

こっからスタジオまで遠いんだけど。
土曜だから休日ダイヤだし乗り換えもあるから…8時頃には出なきゃ。
折角の休みなのにー。

「燈瑪、俺が乗り物を手配してやる」

「陵、良いの?休みなのに」

通話中のまさかの提案に驚いて陵に視線を向ける。
乗り物を用意してくれるなら嬉しい。
電車代も掛かんないし移動中寝てても乗り過ごす心配ないし。
でも折角の休みを付き合わせるのもなぁ。陵も何か予定あるかもしれないのに。

「良いんだよ。ただ、お礼は前払いな」

「え?うひゃあっ!」

『おっ、お姫様!?どうしたのっ!?』

りょっ、陵の手がっ!
腰に回ってた陵の手が急に服の、中にっ!
動こうとすればする程手が体を撫で回して小さく震える。

「んっ…りょ、陵っ…止めっ…」

『っ!陵君っ!抜け駆けは駄目だよっ!!』

「うっせぇ」

抜け駆けの意味を考えてたら手から携帯を奪われて遠くへ投げられた。
ちゃんとソファに投げてくれたけど、壊れたらどうすんだよー…
投げられた携帯を目で追ってたら今度は手が胸元まで伸びてくる。
なっ、何やってんだよ陵…!

「止めっ、んんっ…りょ、ぉ…っ」

何か、変な感じ。
擽ったいような熱いような…変な感じ。
力で勝てる筈もないのに陵の腕を掴んで押し返しながら振り向いた。

「っ…悪ぃ」

そう言って陵は素直に手を離してくれた。
俺は変な声を出しちゃったのを思い出して咄嗟に赤くなる顔を隠した。
お、俺、何て声を…!
陵は俺をソファに下ろして立ち上がってドアに向かう。
何処に行くんだろ…。

「…風呂入ってくる」

「う、うん。いってらっしゃい」

陵の方を見るのが気恥ずかしくてうつ向いたまま返事をし、ドアが閉まると緊張が解けてソファに寝転がる。
さっきの、何だったんだろ…お礼の前払いって何?
あ、朝飯は好物作れとか?
じゃあ明日の朝飯は和食だな。

「取り敢えず、寝よう」

今日は色々あり過ぎて疲れた。
頭もキャパオーバーしてるよ。
あ、明日改めて陵にお礼言わなきゃ。結局ちゃんと言えなかったし。
明日から、遂に『khaos』が再始動する。
生徒会長とか不安はあるけどまた歌えるのが嬉しい。
楽しみだな。
自分の部屋に帰るなりそのままベッドに倒れ込んで直ぐに眠りに就いた。


 


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