声に乗せて | ナノ


 


桜慈のキスも上手かった。
寧ろ現在進行形で上手い。
二人とは違って片腕を俺の腰に回して反対の手を後頭部に添えられる。
無意識に桜慈のシャツを掴むと不意に口の中に暖かいものが入ってきた。

「んぅっ!んっんっ」

驚いて目を見開かせると同じように驚いてる陵と徹を見た。
そして直ぐ目を閉じた。
入ってきたのは柔らかい舌で。
口の中を舌が動く度声が漏れてしまう。
桜慈の唾液を流し込まれて余す事なく口の中全体を舌で撫でられる。
何か、フワフワする。
体の力が抜けた頃、桜慈の唇が離れて俺の顔を隠すように胸元に抱き寄せられる。

「…ずりぃ」

ボソッと徹の声が聞こえる。
何がどう狡いのかが分かんない。
呼吸も整って顔の熱が取れた頃、ゆっくりと顔を上げる。

「燈瑪、可愛かったよ」

そう言って俺の頭を撫でるのはやっぱり可愛い妹の顔。
さっきの男の顔は見間違いだな、うん。

「なーんか、頑張った俺へのご褒美が一番軽くねぇ?」

不貞腐れたように呟いた徹に視線を向ける。
顔まで不貞腐れてる顔してるよ。

「ま、いっか。次に期待してるぜ」

歯を覗かせて笑いながら立ち上がり取っていたカツラと眼鏡を手に取り付ける。

「帰んの?」

桜慈に抱き締められたまま徹を見上げて尋ねる。

「おー。本当はまだ居たいけど、さ」

「徹は今から副会長も攻略しに行くんだよ」

目を光らせて嬉しそうに答える桜慈に徹が溜息を吐いた。

「あいつ苦手だー。まぁ、頑張るけど。デカイ声で喋ってズバズバ言えば良いんだよな?」

「そうそう」

桜慈に最終確認をしてから徹は王道主人公の姿で部屋を出ていった。


 


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