声に乗せて | ナノ


 


さっきの徹との触れ合うキスよりも角度が深いキスをされた。
何て言うんだろ。これが経験の違い?
陵は素直にキスが上手いと関心する。
角度を変えられる度に小さく肩が跳ねる。

「ワンコ、いつまでしてんの」

不意に俺の後ろに居た桜慈がいつもより低い声で喋ると同時に陵の唇が離れた。

「ぷはっ」

ぶっちゃけ、キスしてる間息止めちゃってたから苦しかったんだよな。
軽く深呼吸して呼吸を整える。

「なぁなぁ、もしかして燈瑪、俺とのキスがファーストキス?」

徹が何やら嬉しそうに目を輝かせて聞いてきた。
何か言いづらいなー。

「違うよ」

「じゃあ、帝さんとか?」

「まさか」

今度は即答で答えた。
陵、何で真っ先に帝が出てくるんだよ。
もっと居るだろ、身近に俺とキスするような子が。

「正解は僕でしたー」

桜慈が腰に腕を回して得意気に答えた。
二人が桜慈と俺を交互に見てくる。
確か昔、桜慈が『おうじがひめをしあわせにするーっ』って言ってキスしてきたんだよな。
あの頃はもう、ちっちゃくて髪も長くてほんと可愛かった。
今も可愛いよ勿論。可愛すぎなぐらい。

「僕もファーストキスは燈瑪なんだよー」

「一緒だな」

桜慈が甘い笑顔を浮かべるから俺もつられてデレデレしちゃう。
腰に回ってた腕が動いて俺の脇の下に回されるとクルッと簡単に向かい合うように座らされた。
桜慈、力持ちだなー。
てか、桜慈の膝の上に跨がってるけど重くない?

「燈瑪、僕が綺麗にしてあげる」

そっと囁かれた言葉に息を飲んだ。
だって俺の可愛い妹が、あまりにも男みたいな顔をするから。

自分が着てるシャツの袖で俺の唇をゴシゴシと拭いてから桜慈の顔が近付いてくる。
昔キスをした時の事を思い出しながら俺はゆっくりと瞼を閉じた。


 


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