SSS置き場 | ナノ


 拓人とカノン

久しぶりの休日。何をしようか、昨日の夜から考えてたけど結局何も思いつかなかったから、読書でもしてゆっくり過ごそうかなと考えていた、朝のこと。

「兄さん兄さん!」

どたどたと廊下を走る騒がしい足音が聞こえたかと思うと、部屋のドアが勢いよく開けられて、部屋に入ってきたのは案の定カノン。入る時はノックくらいしろと何度も言ってるけどもう諦めた。
しかし、随分と興奮している様子だが、どうしたのだろうか。

「朝から騒々しい」
「商店街で中学生のコンサートがあるんだって! 聞きに行こう!」
「へえ。そうなのか」
「オレは行くけど、兄さんも行くよね!」

カノンの中ではもう決定事項らしい。コンサートと聞いたら行くけど。
とりあえず、ろくでもないことを言い出さなくてほっとした。腹筋を鍛えたから見てくれってだけの理由で朝早くに起こされたなんてこともあったからな。

「早く行こうよ! 始まっちゃうよ!」
「こんな早くからやらないだろ。まだ九時にもなってないんだぞ」
「いい場所取らないと!」
「花見じゃないんだから……。そもそも何時からなんだよ」
「午後からだって!」
「……お前なぁ」

今から行ってどうしていろと言うんだ。買い物でもしてろってか? 男二人――というか、カノンと二人で一緒に買い物なんてごめんだ。三十分くらいならともかく、何時間も一緒に行動するだなんて考えただけでも嫌だ。まして今日は久しぶりの休日なのに。

「かわいい子を見るためにいい場所取っておきたいんだよ。年下ってかわいい子多いからね」
「一人で行って取ってろ」
「えー。兄さんは相変わらず冷たいなぁ」

ちなみにカノンの言う「かわいい子」とは、女ではなく男のことだ。女は自然と集まってくるから飽きたのだそう。だからといって男相手に本気で恋愛をするつもりではない……らしい。本人じゃないから断言はできないが、少なくとも本人はそう言っている。

カノンと一緒にいたくないのはそういう理由。遠い親戚らしく、同じ高校に通う都合で一緒に住んでるからよく迫られたりする。
おまけに悔しいくらい整ってる顔をしてるから、一緒に歩いてると注目の的になる。手を振られたと騒いでいる女性の皆さん、カノンが手を振ったのは貴女ではなくその後ろの男性へ向けてです。

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