SSS置き場 | ナノ


 木管組

ゴールデンタイムに放送されている某国民的アニメのイントロは軽快で、曲調もポップでかわいらしく、子ども向けのアニメらしい曲だ。
しかしその軽快なイントロを拓人が演奏すると、これからニュース番組、あるいは討論番組、もしくは大河ドラマでも始まるのかと思わせるようなメロディになる。部員には笑われ、源内先生にまでおかしいと言われる始末で、拓人は頭を抱えていた。

「千鳥は見てへんの?」
「……まだその時間には家に帰ってないだろ」

全員に突っ込まれた翌日の木管のセクション練習中、鴨部に尋ねられてそう言い訳したが、そうでなくてもそのアニメは見ていなかった。なぜかといえば、子ども向けのアニメだから、高校生が見るようなものではないと思っているから。他の人が見ていると聞いてもなんとも思わないのだが、自分が見るのは恥ずかしい。たまに子ども向けのアニメを放送していても、それがひとりの時でも恥ずかしくなってすぐにチャンネルを変える。

「千鳥くんはアニメはあまり見ていなさそうだよねぇ」
「ニュースかエッチなビデオくらいしか見てへんやろうな」
「そっ、そんなビデオは見てない! 見てないからな!」
「ムキにならんでも、男なら恥ずかしがることないで?」

喧嘩を始めた鴨部と拓人を見て、慌てる朔楽に、能天気に笑う熊谷。わざとらしい咳払いでそれを止めたのは弾。話を戻しますけど、と弾が話し始める。

「難しく考えなくても、曲を知ってたら同じように吹けばいいだけの話ですけどね」
「茅ヶ崎も見てたりするのか?」
「れんれんに付き合って見てますよ」
「そ、そうなのか……」

なんとなく、弾も一般的に子ども向けとされているアニメは見ていないものだと勝手に思っていた拓人にとって、その答えは軽くショックだった。
何の番組を見ようが見まいが、それは個人の自由だとしても、そのアニメも今となっては全然見ておらず、曲も知らないのはこの部で自分だけらしい。

「さっき曲聞いたやろ? それとおんなじようにやればええだけの話や。なんも難しくないで」
「とりあえずは政治討論番組のオープニングから脱しましょう」

弾がさりげなく言った政治討論番組という一言に、朔楽がぷっと笑いをこぼしたことには、幸い誰も気付いていないようだった。真剣に悩んでいる本人には悪いが、朔楽も同意見だ。堪え切れない笑いを、咳をするふりをしてごまかした。





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