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 律と鳴海(大学生)

ユーフォの練習用に、なるみんが今までの楽譜を貸してくれることになった。都合のいい時になるみんの家まで取りに行くよって言ったら、俺が家に届けるから! って言ってきかないのでお言葉に甘えることにした。

「こっちが中学の時ので、で、これが、高校の。このファイルは、大学以降のやつ。す、好きに使ってね!」

数日後、なるみんが息を切らして届けてくれたのはトートバッグいっぱいの数冊のぱんぱんのクリアファイルだった。
なるほど、俺が届けるからって言ってきかなかったのはこういうわけだったのか。こんなに持ってくるとは思ってなくてびっくりしたし、重い思いをさせて申し訳ない。でも、こういうところがなるみんの優しいところだよね。

「ちょっと見てもいい? その間休んでていいから」
「ごっ、ごめん……」

机に突っ伏すなるみんの横で、早速持ってきてもらったクリアファイルを手に取る。表紙に書かれた「Euph 木之下鳴海」って文字がところどころかすれてるのが中学生の時に使ってたやつかな。不揃いの字がなるみんのお調子者な性格を表してるみたいで思わず笑ってしまった。

ぱらぱら眺めただけでも、なるみんって本当にユーフォが好きなんだなぁっていうのがよく分かる。こうして大事に楽譜をとってあるのもだし、書き込みから熱意が伝わってくる。先生に言われたことが細かく書いてあったり、音楽記号の上にわざわざその意味が書いてあったりとか、熱心でまめだよね。

「俺の字汚くてごめんね……楽譜見にくくて……」
「ううん。そんなことないよ。僕のより見やすいよ」

走り書きしてあとから読み返すと何が書いてあるのか分からなくなる、っていうのはあるあるで、そんなところはいくつかあるけど、僕の楽譜よりは見やすいと思う。パーカスって人数が足りないとパートの掛け持ちが当たり前で、例えば休みだからトライアングルを三小節やってって言われたら、三小節だけ切り取って貼りつけたりするんだけど、そんな風に切り貼りしすぎてごちゃごちゃになるんだよね。切り貼りしていない、きれいな状態で取ってある楽譜って、確認してみたらあんまりないかもしれない。

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