SSS置き場 | ナノ


 和希と舞

準備室には、ネームラベルが貼られた棚がある。そこにラベルに書かれたパートごとに自分の楽譜やチューナーとかをしまっておく。パーカスの棚は楽譜にプラスして備品の小物やスティック、マレットなんかも一緒にそこに置いてあるから、特別に二段使用している。

さらにその上の扉がついた棚があって、中には何十年も前の先輩たちの楽譜や折れて先っちょだけのマレット、片方は折れたのかなくしたのか一本しかないスティックなんかが詰め込んである。先輩たちはゴミ箱って呼んでたけどまさにその通り。楽譜はともかくマレットは何のために取ってあるんだか。

ある日、昼休み(っつっても平日じゃなくて今日は日曜日だけど)にタンバリンを取りに準備室に行ったら、そこをあさってる菊池先輩がいた。

「菊池先輩、何やってるんですか?」
「うわあ!?」

急に声をかけたら驚くだろうなとは思ったけど、無視するのもあれだし俺もパーカスの棚に用があるしと声をかけたら案の定驚かれた。バランスを崩して椅子が音を立てたので、とっさに椅子を掴む。……間一髪セーフ。

「な、なんだ、狗井か……。びっくりした」
「す、すみません……。タンバリンを取りにきたら、先輩がいたので何してるのかなって」
「ホイッスルないかって聞かれたから探してたの。確かあったと思うんだよねー。見た記憶はあるんだ」

言いながらホイッスルを探しに再びゴミ箱をあさり始める菊池先輩。なんとなく椅子は抑えたままだったけど、よく見たら先輩はつま先で立ってて今度は俺が驚く番。椅子もがたがた言ってるし、危ないでしょ、これ。

「……あのー、よかったら、俺が探しましょうか?」
「えっ?」
「暇だったし、俺の方がもう少し上まで届くと思うんで」
「うーん……じゃあお願いしようかな。あ、お礼にあとでジュースおごるから忘れてたら言って」
「いいですよ、別にこのくらい……」

俺はでかいってほど身長があるわけじゃないけど菊池先輩よりはでかいし、男だから万が一落ちても楽器さえ壊さなければ平気だし。

……あと、俺が代わりにーってつい口から出たのは、三年生の先輩って一年二年と比べるとスカートが短いから、見えそうだったっていう理由もある。男なら誰だって目が行くだろ。だからといって、俺は鼻の下伸ばして見たりしないからな!

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