SSS置き場 | ナノ


 連と冴苗と山吹

「なんか、さっきのとこ気持ち悪くない?」
「あ、それ、あたしも思ってた! なんか気持ち悪いですよね」
「でしょー?」

それはおれも思ってた。おれが気持ち悪いと感じたところが先輩たちと一緒なら、おそらくここ。サビが終わる少し前。
誰かのピッチが悪くてちゃんとハモれてないのか、それとも誰か音を外したのか。どっちもおれじゃないはず。

茅ヶ崎先輩に楽譜見せてと言われたのでクリアファイルごと楽譜を渡す。榎並先輩から3rdの楽譜ももらって、自分の1stの楽譜とおれの2ndの楽譜、それから3rdの楽譜を交互に見て茅ヶ崎先輩は顔をしかめる。

「ピッチが悪いのかなー? あたしかなー?」
「いんや、ピッチじゃない。たぶん楽譜が間違ってる」

楽譜が間違ってるっていうのは時々あること、らしい。おれは出会ったことないけどね。

なんでもいいからペン貸して、ってなぜかおれのほうに手を出されたから譜面台に置いてたシャーペンを茅ヶ崎先輩の手のひらに乗せる。おれからシャーペンを受け取ると、人のクリアファイルから楽譜を抜き取って何やら書き込んでいた。

「これでハマると思う。テレビでやってるのと音もリズムもちょっと違ったから直しておいた」
「あー、そう言われればそうかも。そっか、さっきのはテレビのと違ったのか。それが気持ち悪かったんだ」
「……でも、勝手におれたちだけ書きかえちゃっていいんですか?」
「別にいいじゃん。合奏の時になんか言われたら言えば。ぶっきーっておかたいよねー」
「そーそー」

……そのあだ名はやめてほしい。
まあ、テレビで聞いてるのと違うからってなじんでるほうに合わせるのはいいと思う。勝手にアレンジされたりアドリブ入れられるよりは。それができなくていつも楽譜通りにしか吹かないおれはつまんない奴なんだそうだ。そんなこと言われても、突然楽譜にないことされて瞬時にそれに合わせるとか無理ですから。中学じゃそんなことなかったし。

「ラッパには珍しいタイプだよなー」
「ですよね。なんでぶっきーペットにしたの?」
「……いろいろと事情があったんですよ、いろいろ」

トランペットどころか、そもそも吹部に入るつもりすらなかったのに、気が付いたらまた吹部に入ってまたトランペット吹いてた。転部もできるけど、めんどくさいからってなんだかんだで続けてるってことは、嫌いではないんだと思う。

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