SSS置き場 | ナノ


 和希と音哉(×奏斗)

「そこにいられると通行の邪魔なんですけど」

なんか曲を聞いてるらしい合歓木センパイのために、少し大きな声で注意してやる。合歓木センパイがいるのは準備室の入り口付近とはいえ、出入りするのにそれほど邪魔ではなかったりするんだけど、合歓木センパイだし。ただの八つ当たりだ。

「お前が避ければいいだろ」

センパイと会話する気は毛頭ないけど、人と話す時くらい片耳でもいいからイヤホン外せよ。あーむかつく。些細なことでもこの人だとなんかむかつく。俺を一瞬だけ見てあからさまにため息吐いたのもむかつく。

「つーか、何熱心に聴いてるんですか」
「中学ん時の定演」

てっきりお前には関係ないとでも返ってくるかと思ったらまともな返答が返ってきた。聞いたところで話を広げる気はないけどさぁ。聴き入ってる様子だったから、少し邪魔してやりたかっただけで。

「奏斗のドラムソロがかっこいいけど、お前には絶対に聞かせてやらない」
「猫柳先輩のソロなんてさぞかしかっこいいんでしょうけど、別にいいですよ」
「奏斗に聞かせろって頼んでも、恥ずかしいから嫌だって言って聞かせてくれないからな」

本人に頼みますから、と言おうと思ったら読まれてたらしい。むかつく。つーか仮に聞くかって言われても、合歓木センパイとイヤホン半分ことかしんでもごめんだ。

「こうして聞くと奏斗のドラムも結構変わったなって感じるけど、お前にこんな話しても無駄か」
「……だったら最初からしないでくださいよ」
「中学時代の奏斗をお前は知らないんだもんな」

悔しいけどその通りだから何も言えない。猫柳先輩の中学時代なんて、今と同じように吹部でパーカスだったってことくらいしか知らない。

好きになるのに、一緒に過ごした時間の長さは関係ないけど、俺の知らない猫柳先輩を合歓木センパイはたくさん知ってるんだと思うとやっぱりむかつく。それは合歓木センパイだからか、俺が猫柳先輩を好きだからか。……両方、いや前者が大きいんだろうな。

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