SSS置き場 | ナノ


 冬子と真夏

「こー寒くなってくるとさー、あったかいものが食べたくなるよねえ」

先日行われた席替えで幸運にもストーブに比較的近い席になった冬子が、さらにカーディガンにひざ掛けというスタイルでぬくぬくしていた。机にべったりと伏せている冬子の表情はなんとも幸せそうだ。

「たとえば?」

運悪くストーブから離れた席になってしまった真夏は、休み時間になるたびあたたかさを求めて冬子の席へ遊びにきていた。

「シチューとか、あと……うーん、おでんとか、肉まんとか? 改めて聞かれるとなかなか出てこないもんだね」
「すき焼き、お鍋、グラタン、焼き芋、鍋焼きうどん」
「ああ……いいねえ……ご飯食べたばっかりなのにお腹空いてきちゃったよ……」

先ほど五時間目の授業を終えたところで、あと数分で六時間目が始まる。一時間ほど前にお弁当を食べたばかりだというのに、真夏が食べ物の話をしてくるものだからもうお腹が空いてきた。

「私は常に空いてるようなもんだけどね」
「真夏は食べても太らないからいいよね……食べた分胸にいくんだもんね……」

目の前でお菓子を食べている真夏に、下から羨ましそうな、悔しそうな視線を送る。その小さな体のどこに入るのだろう、といつもながら不思議に思う。

「帰りに肉まん食べようかな。ピザまんも捨てがたい」
「真夏の話聞いてたら私も食べたくなってきちゃったよ……」
「食べれば?」
「食べたいのはやまやまなんだけどね……」

食べたら食べた分だけ体重が増える冬子にとっては、真夏のようにはいかない。体重が気になるお年頃なのだ。

「おいしい時に食べないのってすごくもったいないと思うんだけど。それに、食べたいと思った時に食べたいものを食べるのって最高に幸せじゃん。チャンスを逃したらもったいないよ」
「……それもそうだよね」

ダイエットしなきゃ、とはたびたび思うものの、真夏の「食べたい時に食べたいものを食べるのが最高の幸せ」という台詞を聞くと、その通りだなといつも丸め込まれるのだった。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -