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 観田先生とパーカスリズム隊

今日の合奏はななちゃん先生が指揮を振ると聞いて、小さくガッツポーズをした。

今日の合奏の予定にマーチが入ってたはず。今日もあれをやるんだろうなと思うと今からわくわくする。

マーチはいつもと少し楽器が違って、スネアが猫柳、ティンパニが百合根なのはいつもと一緒だけど、バスドラがあたしでシンバルが兎田、鍵盤が狗井。
楽譜を配られて楽器を決める時に狗井が鍵盤なんてできる気がしないとかなんとか言ってたけど、バスドラは重要だから無理って言って、スネアとティンパニなんかもっと無理って言って、シンバルは目立つから嫌だってなったら消去法で鍵盤しかない。

「チューニング終わった? じゃー最初からトゥッティで!」

ななちゃん先生が指揮棒を構えたのを見て、あたしはマレットを、隣の猫柳はスネアの響き線を入れてスティックを、その隣の兎田がシンバルを構える。

曲が始まって、トリオまでは何事もなく、先生が気になって止めることもなく順調に進む。リピートした時からがななちゃん先生の振るマーチの本番。ななちゃん先生が、笑顔をパーカスに向けた時がその合図。

ななちゃん先生の笑顔の煽りに真っ先に乗るのが猫柳。一瞬ずれたように感じるスネアは実は正確で、それにつられるようにして頭打ちのあたしらがどんどん調子に乗ってアッチェレランドをかけて、パーカスリズム隊が管楽器を煽る。

楽譜に書かれたMarch Tempo≪マーチテンポ≫なんて無視して、リピートからパーカス――というかななちゃん先生が確信犯だね、ピウモッソ≪今までよりも速く≫からの最終的にもはや行進できないテンポまでアッチェレランド≪だんだん速く≫して、そのままフィーネ≪終わり≫を迎える。これがうちのマーチ。

「先生、テンポ無視しすぎです。パーカスも煽らない! これマーチですからね! 速すぎです」
「だってーつい速くしたくなるんだもーん」

……といってもこんな風にパーカスを煽ってくるのは何回かだけだし、お客さんの前で演奏する時はもちろんちゃんと演奏するよ。たまのおふざけって楽しいよね。

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