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 和希(と舞)

体育館での練習は好きだ。そのために三階の音楽室から一階の校舎から離れてる体育館まで楽器を運ぶのはくそめんどいけど。こういう時、管楽器が羨ましくなるけど結局打楽器運ぶ手伝いしなきゃいけないしな。明日また音楽室まで運ばなきゃいけないと思うと憂鬱だ。

それはさておき、俺が体育館での練習を好きな理由は、体で音を感じられるから。……こんなこと言ったら笑われそうっつーか恥ずかしくて誰にも言えねえ。
あと普段練習してる音楽室と響きが違うのが少し新鮮ってのもあるな。コンクールや吹奏楽祭だかなんだかで行くホールにはやっぱり負けるけどさ。

猫柳先輩が力強く踏み込むドラムのバスドラと、エレキベースの音がアンプを通して足の裏からびりびりと全身に伝わるこの感覚が好きだ。フィルインのタムが、フィルインが終わった後のシンバルが、オープンのハイハットが、普段とは違う響きを伴って広い空間に響き渡る。

サビの頭でフォルテ二つで叩かれたシンバルはびっくりするけど、先輩が楽しそうで何よりです。俺のいる位置から顔は見えないけど、背中が楽しそう。

足の裏からびりびり伝わるベースについつい体でリズムを取りたくなって、スネアと同じアクセントはついつい張り切っちゃって。

「今日はノリノリだねー? 狗井? なんか張り切ってる?」
「え、あ、いや……別に……」
「んじゃいいことでもあったの?」
「ないです。……好きな曲なのでのっちゃっただけです」
「ふーん。ま、いいことだね」

……とっさに口から出まかせで言っちゃったけど、あながち間違いでもないからいいか。

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テーマ「推しとの恋」
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