「好きな物くらい堂々と買えばいいのに」
「お前くらい堂々とできたら苦労しねーよ」

心なしか楽しそうな表情で漫画を読んでいるひなちゃんに向かって小さい声で言ったら、夕輔から突っ込まれた。たぶんひなちゃんには漫画に夢中で聞こえてない。

だってそうじゃん？　好きな物は好きって堂々としてりゃいいのにさ。鳥海ちゃんみたいに。こうやってこそこそするよりはそっちのほうがいいんじゃねーの？

ひなとの大好きな漫画は一時期オレが代わりに買ってやってたこともあるけど、今は通販を利用してる。で、隣でこれまた楽しそうにスマホを眺めてる夕輔の趣味は、動物の写真や動画を見ること。今日日どっちも珍しい趣味じゃないと思うのはオレだけ？　漫画が好きな人も、動物を見て癒される人も大量にいるだろうよ。

「お前だって堂々と見りゃいいだろ。見られて困るようなものは見てないんだし」
「……見られて困るようなもんはそもそも人前で見るほうが馬鹿だろ」

ごもっともな突っ込みで。

男でかわいいものが好きっていうのも、顔が良けりゃプラスだと思うけどな。ギャップってやつ。ちらっと見えた夕輔のスマホには子猫がたわむれてる写真だか動画。人前でアダルトなほうのAV見る奴はどうかと思うけどアニマルなAV見るのは別にいいじゃねーか。スマホの壁紙くらい猫のでも犬のでもひよこのでも好きにしろよ。

ひなとだって女の子がいやらしいことされてるような漫画は好んで読んでない。というかあいつくそ真面目だからそういうエッチな本は高校を卒業してからじゃないと絶対に買わない。男同士や女同士で絡んでる漫画でもない。鳥海ちゃんと付き合ってからいろんな漫画を読むようになったけど、基本的には青年漫画か少年漫画だし、世間で流行ってる漫画が多い。普段は漫画読まない奴も、流行ってるからって読んだりする奴はいるじゃん。だから尚更。

まあひなちゃんはリア充だから漫画の話ができる相手はもういるけど、夕輔はもっとオープンになればいいのに。好きな物で一緒に盛り上がれるのって楽しいじゃん？　イケメンアワーズなんて呼ばれてるくらいなんだし、なんとも思われないどころかもっと人気出るってーの。なんで顔がいいことをもっと利用しないんだろうな、こいつらって。