SSS置き場 | ナノ


 真夏と冬子

自分たち以外教室に誰もいないのをいいことに、スカートで大股を開いたり制服を捲り上げたりと女子らしからぬ格好をしていた。

時刻はもう少しで完全下校になるところ。暑い中帰るのが嫌だからという理由で真夏と冬子は残っていた。

「髪、切ろうかなぁ」

冬子が顔を上げると、真夏は目にかかるほど伸びた前髪を指先でいじっていた。

「目悪くなるし切ったほうがいいよー」
「ついでに後ろもばっさり」
「それはダメ」

真夏の髪が長いのは、面倒くさがりゆえに切りに行かないからだ。かといって手入れも面倒だからばっさり切ってしまおうかと時々思うのだが、冬子がダメだと言うのでこの長さをキープしている。
ちなみに二つ結びなのは、昔冬子の家に遊びに行った時に冬子のお母さんが結ってくれたのがきっかけで、以降なんとなく気に入ってそうしていた。

「長いほうが真夏らしいもん」
「見慣れてるだけでしょ」
「そうかもだけどー。あとヘアアレンジできなくなるのやだし」
「自分の髪伸ばしてやりなよ」
「それじゃおもしろくない」

冬子は真夏の髪をいじるのが好きだった。冬子の家に遊びに行くとほぼ毎回髪をいじって遊ばれていた。
ヘアアレンジをするのも、かわいい服を着るのも、自分がしてもおもしろくないからという理由でよく真夏を着飾っている。真夏も周りの女子ほどではないにしろ、おしゃれにはそこそこ関心があるので嫌ではない。

「あっそういえばもうすぐ夏祭りじゃん! それまでにいろいろ勉強しておこーっと」
「楽しみにしてるね」
「うん! 私も楽しみ!」

冬子の言う勉強は、新しいヘアアレンジを雑誌などで調べておくこと。

毎年夏祭りの日は、冬子の母親に浴衣を着せられ、冬子に髪をセットされと張り切った大空家に振り回されていた。

今年こそは冬子の髪をいじってやろう。早速勉強を始めた冬子を横目に、真夏はぼんやりと決意した。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -