SSS置き場 | ナノ


 舞と奏斗と律と鈴々依と和希

楽譜を配られたら、パーカッションはまずパートの割り振りをしなければならない。

パートリーダーである奏斗から楽譜を受け取り、舞はそれを床に広げる。
本来なら唯一の三年生である舞がパートリーダーのはずだが、舞は副部長をやっているため二年の奏斗が名目上はパートリーダーだ。

「うわーこれめんどくさいやつだ」

楽譜をざっと眺めた後につぶやかれた舞の独り言に、四人は前のめりになって楽譜を覗き込む。

和希が目についたマレットの楽譜の、ト音記号の隣にはアルファベットのCのような記号――Common Time(コモンタイム)、すなわち四分の四拍子を表す記号が記してあった。トランプを広げて持つ時のように、扇状に広げているため半分ほど隠れて全部は見えないが、途中で拍子が変わったりすることはなさそうだった。

「一拍で持ち替えろとか絶対無理じゃん。こういうのってなに考えて作ってんだろ」

なにが面倒なのだろう、と考えてすぐ、ため息交じりに呟かれた舞の台詞に納得する。
時間にして一秒足らずで楽器を置き、違う楽器を持って演奏するなんて不可能に近い。こういった楽譜はよくある。

「しかもドラムの楽譜三枚あるよこれ」
「うわあ、そういうのやめてー!」

頭を抱えて奏斗は後ろに倒れ込む。ドラムはどの曲でもほぼ常に刻んでいるため、演奏中に楽譜をめくることができないのだ。見開き二ページにおさまらない楽譜は割とよくあるが、休みがないとめくるタイミングがなく厄介だ。

「ま、細かいことはあとあと決めるとして」

楽譜を見てあれこれ考えて割り振っても、実際やってみると考えていた通りにはいかないことがほとんどだ。

「なにやりたい?」
「できればドラム! やりたいです!」
「鍵盤やりたいです!」
「わ、私は……ドラムと鍵盤以外だったらいいです」
「……俺は小物で」

順に奏斗、律、鈴々依、和希。
希望がかぶらなければすんなりとその通りに決まる。今回もいつも通り、奏斗がドラム、律が鍵盤、鈴々依がティンパニ、和希と舞が小物になった。

楽器が決まって早速手渡された楽譜を見て、変拍子こそないものの楽器の数が多く珍しく長休符もほとんどないのを見て、和希は顔をしかめた。

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