SSS置き場 | ナノ


 理澄と響介

突然隣から聞こえた大きな音に、全員の視線がおれ――の、隣に集まる。みんなの視線を受けて、隣からはあははと力なく笑う声が聞こえた。

「ごめん……」
「またか」

指揮棒を下ろしながら、千鳥先輩がため息をこぼす。と同時に苦笑にも似た音楽室中からちらほらと起こる。

隣の倉鹿野先輩の前には、首が折れて低くなった譜面台。足元には楽譜が散らばっていた。

「違うの取ってくる! 続けてて!」
「急がなくていいぞ」

倉鹿野先輩が準備室に入って行った後、千鳥先輩がフルートの指導を再開したので、足元に散らばってる楽譜を拾い集めて、クリアファイルと一緒に先輩が座っていた椅子の上に置く。

これで何回目だろう。入部してすぐの頃は数えてたりもしたけど、あまりにもよく起きるから途中でやめた。

学校の譜面台は古いものと新しいものとが混ざってて、中には壊れているものもいくつかある。うっかり使ってしまうことがあるから処分して欲しいって何度か頼んでるみたいなんだけど、未だに捨てられてない。

古い譜面台は高さや譜面の角度を調節するねじがきかなくなってたり、使えるには使えても演奏中にねじがゆるんでさっきの倉鹿野先輩みたいなことが起きるんだよね。

譜面台に限らず、新しいものは基本的に年功序列で先輩から新しいものを使う暗黙のルールがあるけど、先輩はいつも古いのを使ってた。そのせいでよく突然首が折れて譜面をばらまいてた。

新しい譜面台を使えって周りに言われて使った時は、首が折れたりすることはなかったけど、その代わりよく倒れた。足を引っかけたり、誰かが通りすがりにぶつかったりと理由は様々だけどとにかくよく倒れた。

譜面台の問題ではなく、パート練習をしている時に、先輩がカウントをはじめるとメトロノームがちょうど止まったり、ハモデの調子が悪い日に前を通ると音が止まったりってことがちょくちょくあったから、倉鹿野先輩は不幸体質なんだと思う。どんまい、としか言えない。

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