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 (音哉×)奏斗←和希

初恋は実らない。

少女漫画のようなフレーズ。実際どうなのかは知らない。
少女漫画には興味はないけど、はじめて好きになる人は、"憧れ"が大きいからその恋は実らないのだと。それには納得した覚えがある。

俺の初恋は小学生の時、クラスの中でちょっとかわいい女子を意識してたのが多分初恋だったと思う。
でも小さい頃の恋なんて、本気で人を好きになることはまずない。周りがかわいいかわいい言うからなんとなくその気になって、周りの女子よりはちょっとだけ気になる存在。その差はほとんどなかった。
意識し始めたのが一学期で、夏休みに入る頃にはもうその女子のことは意識するどころか頭から抜けていた。その頃だったらみんな大体そんなもんだと思う。

中学は周りの奴らにありもしない噂を立てられるのが嫌で、そもそも女子のことは避けて過ごしていた。それでも席が隣になったとか、理科の授業でたまたま続けて同じ班になったとか、くだらない理由で噂が立ったりもしていた。
人の噂も七十五日ってことわざがあるように、それも一週間か、長くても一ヶ月持つことはなくて、気が付いたら今度は違う学年内の誰かが標的にされていた。面白がって聞いてたりもしたけど、それほど興味はなかった。誰が誰を好きだろうと、誰が誰と付き合おうと俺には関係ないし。

高校は近いからという理由で男子校を受験して、無事に合格して、今度こそ根も葉もない変な噂とはおさらばだと思ってせいせいしていた。
自分が誰かを好きになるなんて想像できなかったし、少なくとも同性しかいない環境なら浮ついた噂も今までと比べれば減るだろうなと思っていた。

今度は誰と誰がカップルだホモだと騒ぐ奴らがいてもある程度予想はしていたけど、まさか俺が誰かを好きになるとは思ってもみなかった。

最初は憧れからだった。その人を追いかけて、同じ部活に入って、同じパートになって、一緒にいる時間が増えて。
目で追っているうちに、俺だけのものにしたいと思った。

……けど、憧れから始まってるから、きっとこの恋は実らないんだろうな。先輩にはもう恋人がいるって分かる前から、なんとなく分かっていた。
先輩のことは好きだけど、誰にも渡したくないけど、今でも俺にとって先輩は"憧れ"で、きっとこの先も"憧れ"を通さずには見られないから、絶対にこの恋が実ることはない。

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テーマ「推しとの恋」
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