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 冬子と真夏

楽しい楽しい夏休み――を迎える前に乗り越えなければならないもの、それは定期考査。
憂鬱だ、面倒だと文句を言いながらも追試と留年は避けたいので皆仕方なく机に向かう。追試になったら夏休みをエンジョイするどころではない。

定期考査まであと三日。テスト期間に入ってから、冬子と真夏は毎日放課後は残って勉強をしていた。
机を向かい合わせにくっつけ、分からないところは教え合ったり、一緒に考えたり、それでも分からなければ職員室に行って先生に教えてもらう。

完全下校五分前のベルが鳴り、帰る頃には夏至が近いというのに外は薄暗くなっている。青とオレンジのきれいなグラデーションがかかった西の空には一番星が輝いていた。

テスト期間中は、少しだけ遠回りをして帰る。家に帰ってまた勉強しなければならないのが億劫だからという理由だ。心なしか二人の歩くスピードもいつもよりゆっくりだ。しかし結局勉強からは逃れられない。

「あ、流れ星」
「どこどこ!?」
「もう消えちゃったよ」

真夏が指さした方向へ目を向けると、流れ星は見えなかったが、青から濃紺に色を変えた空にはちらほらと星が輝いていた。

「なーんだ。お願い事しようと思ってたのに」
「なにをお願いしようと思ってたの?」
「テストでいい点数がとれますように! かな。ほかにもいろいろあるけど、今はね」
「……それ三回言える?」
「無理。ていうか流れ星って、見つけて『あっ』て思ったらもう消えてるじゃん」
「まあね。頑張って消える前に言えて『金金金』くらいじゃないかな」
「あ、それいい!」

なんとも夢のない話だ。

こうして他愛のない話をしながら一緒に帰る時間が、テスト期間中で唯一心が休まる時だった。

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