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 舞と拓人

「吹コンですっかり忘れてたけど、今日って七夕なんだね」
「俺もすっかり忘れてた」

朝のニュースで言っていたような記憶もあるが、合奏を始める前にななちゃん先生こと観田先生が「今日は七夕だねぇ」と無駄話を始めてようやく気付いた。

吹奏楽コンクールまで、あと数週間。練習にもますます熱が入ってきた。地域によって日は違うが、吹奏楽コンクールは七月から始まり、ゴールド金賞を取って代表になると夏休みはほぼ潰れることになる。よって夏のイベントには周りほどあまり関心がなかったり、部活に夢中になるあまり頭から抜けていたりする。

「七夕っていうと、たなばたやってみたかったなぁ」
「あー、たなばたいいよな。俺も一回やってみたい」

たなばた、正式名称「The Seventh Night of July」は、吹奏楽コンクールでもよく演奏されている吹奏楽曲のひとつ。さわやかな曲で、人気が高い。ちなみに作曲者は当時十七歳でこの曲を作ったのだそうだ。

「でもパーカスきついからうちじゃ無理だろうな」

西高のパーカッションは五人。時には三人で事足りる曲もあったりするが、五人といわれても実際演奏してみると厳しかったりする。

「それよりも織姫と彦星だよね」
「織姫と彦星? どういうことだ?」
「中間部のサックスとユーフォって、織姫と彦星をあらわしてるんじゃなかったっけ」
「……なるほどな」

舞の説明で拓人はすべてを察した。

もし、たなばたをやることになったら、間違いなく中間部のサックスのソロは弾が持っていくだろう。本人の性格を差し引いても、実力でいってもそうなるはずだ。
サックスは織姫を現しているそうで、つまり弾になる。そして彦星、ユーフォは鳴海。

「そこは気にすることじゃないけど……」
「なんかね。人の組み合わせがね……」


2015/07/07

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