SSS置き場 | ナノ


 連と冴苗

「ポニテちゃん!」
「はい?」
「じゃーんけーん」

突然連に名前を呼ばれて振り返ると、いきなりじゃんけんの掛け声。よく分からないが、とっさに右手をグーにして突き出す。

「ぽん!」

掛け声とともに、連が出したのはパー。冴苗が出したのはチョキ。冴苗の勝ちだ。

「ポニテちゃんの勝ちー! やったね」
「……いきなりなんなんですか?」

なぜかじゃんけんで負けて嬉しそうな連に、冴苗は顔をしかめる。

「ってことで、ソロよろしくねー」
「はい? ソロ? あたしが吹くんですか?」
「うん!」

笑顔で頷くとひらひら手を振りながらいなくなろうとする連の腕を掴み、教室の中へ引き戻す。

「いろいろおかしくないですか? あたし基本3rdですよ? 3rdの冴苗ですよ?」
「なんで? コンクールとかじゃないし別にいいじゃん。短いしそんなに目立たないから大丈夫だよ」

コンクールや定期演奏会など、大きな場でなければゆるい学校だとじゃんけんでソロを決めるということはよくあるらしい。冴苗の中学でも他のパートでそういうことはあった。

ソロがあるのは当然1stで、普段3rdばかり吹いている冴苗にとっては短かろうが目立たなかろうが、はい頑張りますとはならない。1stやソロに憧れはあるが、トランペットながら冴苗は高音が苦手だった。出そうと思えば出せなくもないのだが、低音の方がきれいで安定していると友人や先輩に何度も褒められたこともあり、自負していた。

「っていうか、れんれん先輩って弟と違ってソロには執着してないんですね」

連の弟、弾なら有無を言わさずソロを奪い取るはずだ。連もソロがあると張り切っていたし、連は三年だから必然的に1stになるというのもあるが、兄弟だからてっきり同じだと思っていた。

「まーねー。ソロは美味しいけどさぁ、ソロだけがすべてじゃないっていうか、必ず先輩がやるものじゃないじゃん? 後輩がやっちゃダメって決まりはないし」
「……もしかして今回めんどくさいからあたしに押し付けました?」
「あ、バレた? だってなんかこの曲リズムめんどくさいんだもん! ってわけでまかせたよ!」
「ちょっ、先輩! 逃げた!」

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -