ジャズは好きだけど、好きじゃなかった。

サックスのソロが多いから好きだけど、ぼくの音がジャズに向いた音じゃないから。

小学生の頃、吹奏楽部に入って、知識がないままがむしゃらに練習したせいでぼくの音はすっかりクラシック向けの音になっていた。
中学一年まではそれで満足してたよ。先生の求める音だったからね。あの頃はなにも知識がなかったから、先生に言われるがままに練習してたら今の音になってた。

後悔しているといえばしているような気もするし、してないといえばしてないとも思う。
僕がやっているのは吹奏楽だから、今の音だって充分通用する。そもそもクラシック、ジャズ、ポップス、それぞれに合った音をひとりで出すなんて無理な話だし、吹奏楽をやっていく分には、指揮者の音の好みを抜かせば技術はかなりのところまで通用するはずだ。この指揮者の音の好みっていうのがぼくにとって大きな問題なんだけど。

今後ジャズに移行する気はないし、今後も吹奏楽をやっていきたいから、完璧にジャズ向けの音になりたいわけじゃない。けど、ジャズの軽くて甘い音と、体の奥がびりびりするような、どこかが震えるような、いわゆる「エロい音」が好きだから、自分もそんな音が出したかった。「エロいね」って（もちろん音がね）言われたい。

出したいと思う音をイメージしながら吹いてると、自然とその音に近づいていくよ。

とかいうけど、それって初心者だけなんじゃないかと思う。
イメージしたからってすぐに変わるものじゃないのは分かってる。ぼくだって吹奏楽部に入ってすぐにサックスを今みたいに吹けたわけじゃない。だからきっとあと何年かすれば多少は変わるんだろうけど、何年もこの音で吹いててすっかり定着しちゃってるから。……完全に諦めてはないけどね。今でももがいてる。

技術はゼロに戻っていいから、知識だけほんの少しある状態で、吹奏楽をはじめたばかりの頃の自分に戻りたいなんて、無駄だけど時々思ったりする。