SSS置き場 | ナノ


 有牛と響介

「アドリブかぁ」

そう呟いた有牛の持っている楽譜、「Take the A Train A列車で行こう」この曲には、トランペット、トロンボーン、サックスのアドリブソロがある。
楽譜のアドリブソロの部分は真っ白になっており、アドリブの意味通り即興で演奏しなくてはならない。

「真っ白なんだ……ほんとにアドリブしないといけないんだね……」

トロンボーンの楽譜を見て響介が微苦笑を浮かべる。

「アドリブ得意じゃないから、最悪誰かの演奏でもコピーしようかと思うけど」
「ああ、そういう手もあるね」

本番までにまだ時間はある。有牛の言うようにCDやどこかの学校や団体が演奏している音源を聞いて耳コピするという手もあるし、即興は無理でも自力で楽譜を書き起こすという手もある。

「でも、茅ヶ崎が完璧なアドリブしてたから、それもちょっと嫌だなって。面白くないし」

兄の茅ヶ崎連はトランペットで、弟の茅ヶ崎弾はサックス。目立つことが大好きな二人だからやるだろうと思っていたし、実際その通りで、昨日のはじめての合奏の時に張り切ってアドリブソロを吹いていた。それも演奏するたびに少しずつ違う、文字通りのアドリブ。響介なんて、二人のアドリブに聞き惚れてしまっていつの間にか落ちていた。

「あれはすごかったねー……二人ともさすがって感じ。聞いててぞくぞくしたもん」
「うん。だから俺もやってみようかなって」
「がんばって! ……俺には応援しかできないけど」
「とりあえず帰ったらまずはいろんな音源聞いてみる。その前に、本屋に寄ってアドリブパターン集みたいな本でも探してみようかなって」
「あ、俺も付き合うよ!」
「……ありがと」

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