SSS置き場 | ナノ


 和希と舞と奏斗

雨は嫌いだ。

何が嫌かってとにかくじめっとしてて、くさくて、雨ってだけで意味もなく気分が沈む。
廊下は滑るし、至るものが湿ってて気持ち悪いし、なんかにおうし、下校してる時に相合傘してるカップルに出会うと気まずいし、いいことなんてひとつもない。

「こんにちは」
「あっ狗井!」

音楽室に来てすぐ、ドア付近にいた先輩たちが俺に気付いて挨拶を返すより先に、奥にいた菊池先輩が俺の名前を呼んだ。

今日は帰りのSHRが長引いて遅くなったから、そのことでも怒られるんだろうかと考えながら菊池先輩の元へと急ぐ。楽器も譜面台も組み立ててすでに音出しを始めてる人も何人かいるし、打楽器は半分くらい出ていた。

「ティッシュ持ってない?」
「ティッシュですか?」

正直、菊池先輩は苦手で、何を言われるのか緊張してたらそんなことを言われた。

「持ってますけど」
「よかった! くれ!」

手を伸ばして菊池先輩の代わりに答えたのは、隣にいた猫柳先輩。よく分からないけど、とりあえずポケットからティッシュを出して手渡す。

よく見たら机の上には丸めたティッシュが転がっていた。ティッシュには緑っぽい色のなんかが点々とついてて、猫柳先輩がそこへまた緑のなんかがついたティッシュを投げる。そして俺の手渡したティッシュを一枚とって、シンバルをこすり始める。

「何やってるんですか?」
「シンバル磨いてるの」
「梅雨になるとシンバルにカビ生えるんだよね」

ほら、と菊池先輩がシンバルの真ん中の出っ張ってるところを指さす。そこには緑色のカビが出っ張ってるところにそって生えていた。
さっき猫柳先輩が投げたティッシュについてた緑の正体はカビだったのか。一生懸命シンバルこすってるのはカビをとってるのか。

「ぼさっとしてないでさっさと楽器出す! こっちはもう少しで終わるから」
「あっはい!」

大変そうだなと他人事のように猫柳先輩がカビをとってるところをぼーっと見てたら菊池先輩に怒られた。

鞄を置いて、楽器を出しに百合根先輩を追うようにして準備室へと急ぐ。準備室に入るとなんとも言い表せない、独特のにおいに湿気がくわわって思わず顔をしかめる。

やっぱり雨は嫌いだ。

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