SSS置き場 | ナノ


 ひなと×真夏

「かいちょ……」

大したことじゃないけど、聞きたいことがあって名前を呼んだら、机に突っ伏して寝てるらしい会長が見えたから口をつぐむ。背中が微かに上下しているのに合わせてすーすーと寝息が聞こえる。

ひざ掛けにしていた毛布をかけてあげようとして、見えた寝顔に悪戯心が芽生える。会長の寝顔の写真なんて売ったら高くつくだろうな、もちろん冗談だけど。私がそんなもの持ってたら学校にいられなくなる。

少し会長の寝顔を眺めた後で、本の続きを読もうと戻ろうとして、枕代わりにしている腕の下、ノートの上にメモみたいな小さい紙が見えた。気になって腕の下から引き抜こうと力を入れたら、案外あっさり抜けた。
人のものを勝手に見るのはいけないのは分かってるけど、好奇心には勝てない。見ちゃいけないものだったらまた戻せばいいよね。少しくらい場所がずれてたって気付かないだろうし。

メモに書いてあったのは、多分どこかのお店の名前。二列ほど羅列してあって、その横にまるとかばつとかがついてた。
なにこれ、と思ってすぐに、来週の日曜日のデートで行く、少し遠いショッピングモールの中の店だということに気付く。多分だけど。しっかし会長達筆だな。

会長の事情で近場じゃデートできないから、たまのデートはいつも電車で何駅か離れた、高校生が休みの日に遊びに行くには少し遠い場所。
映画館もあるし、レストラン街もあるし、ゲーセンに本屋にといろんなお店があるから、冬子ちゃんと遊びに行く時も場所は大体ショッピングモールになる。冬子ちゃんと行くのは近場のやつね。

初めて行った時に、期間限定のスイーツがあるとか、ここのパスタは美味しいとか、やけに詳しいと思ったら事前にリサーチしてたんだ。真面目な会長らしい。

でも別にそこまでしなくたっていいのに。そんなことする時間があったら勉強なり、息抜きにゲームなり漫画読む時間なりに回せばいいのに。もちろん気持ちは嬉しいよ、でもこんなに事細かに調べなくたって。

誰かと付き合うのは会長が初めてだし、友達少ないからそういう話を聞くことはほとんどないし、他のカップルのデート事情なんて興味ないけど。
適当にぶらっとしてるだけでも、適当なお店に入って適当にお茶したりご飯食べたり、そんなのでも楽しいんだけどな。

私に会長はもったいないな、と時々思うけど、誰かに渡すのも嫌だなぁと思うわけで。
いつかなにかしらの形でお返しができればいいかなぁ……って感じ。

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