▼ 鳴海と律
西高と合同で出る吹奏楽祭で有名な映画の曲を演奏することになった。映画の中で使われた曲が何曲か入ってるメドレーで、有名だから聞いてる方もきっと楽しいだろうな、これ。
映画が放送された当時はまだ俺は生まれてなかったけど、テレビで何回か放送しててなんだかんだで毎回見てるから内容は全部知ってるし覚えてる。それに曲は吹奏楽部では定番といっても過言ではない。中学の時に何度かこのシリーズの曲をやったし、おとやんたちの中学でもやったらしい。
知ってる曲を演奏するっていうのはやっぱり楽しくて、楽譜を渡された日の夜、音源を聞きながら鼻歌を歌っていた。
……ら、なんとこの曲、ユーフォのソロがあるらしい。ソロっていっても完全に伴奏とかがない中でひとりで吹くんじゃないけど、パーカスとユーフォだけのところがあった。
まだ練習が始まってないから分かんないけど、高確率でここのグロッケンかヴィブラフォンのどっちかはりっちゃんになるだろうな。得意だし。
……そういえば、この曲、りっちゃんが大好きって言ってた曲だっけ。奏斗もそのことは知ってるし、楽器を決める時にりっちゃんを推薦するだろうな。
ソロはきたら嬉しいし好きだけど、練習の時でも緊張する。休みの人が俺の演奏に自然と耳を傾けてるのが分かるし、本番ではみんなの前に出たり、ステージで演奏する時はスポットライトが当たったり。
今回は吹奏楽祭に一団体として出るから、前に出たりライトを浴びたりっていうのはないけど。静かな中で自分の音だけが響くって考えると今から緊張する。
さっき久しぶりにりっちゃんからメールがきて、そのことに触れてたから余計に緊張してきた。
僕の好きな曲を俺が吹いてくれるのが嬉しい、楽しみって言われてテンションと心拍数が急上昇した。
りっちゃんの透明感のあるグロッケンの旋律の上に、俺の音がのると思うと。
「となりのトトロ〜コンサートバンドのためのセレクション〜」より「風のとおり道」