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 パーカスと楠瀬

 今、パーカッションはとあるひとつの問題に直面していた。

「……どうする?」

 腕を組み、ため息交じりに呟く舞の視線の先には、すやすやとそれはそれは気持ちよさそうに眠る楠瀬がいた。特技といえば特技になるのだろうか、この楠瀬小夜太という男子は、いつどんな場所でもどんな状況でも寝られるという特技を持っていた。今は音楽室の床で丸まって眠っている。

「まあ起こさなくても問題はないと思いますけど」
「でも気になりますよね」

 何が困るかというと、ここ、音楽室はパーカッションのパート練習場所になっているのだ。というより、打楽器は移動が厳しいので、基本的には音楽室固定だ。

 奏斗が言うように、起こさないで練習をしても音で起きることはほぼないのだが、律の言うようになんとなく気になるのも分かる。

「毛布でもかけてあげます?」
「……でもさぁ、学校の毛布って」
「くっさいですよね」

 音楽準備室には、ケースのない楽器などをくるんだりするためなどに使用する毛布が何枚かある。におうからと天気のいい日には時々干したりもするのだが、それでもにおいは一向にとれない。

「んじゃあまあ、やっぱり気にせず練習しますか」
「しかないですね」
「ですね」

 時折、視界の端に映ったり、ふと思い出して気にしてはみたりしたが、どれだけ大音量で練習しても楠瀬は起きなかった。

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