SSS置き場 | ナノ


 鳴海×律(大学生)

「りっちゃん、眠いなら寝てもいいよ?」
「ん……大丈夫、平気」

りっちゃんが隣で欠伸を噛み殺したのを俺は見逃さなかった。大丈夫って言う声も眠そうだし、膝を抱えてうつらうつらと舟をこいでいる姿はどう見たって大丈夫そうじゃない。

「時間になったら起こすし」
「大丈夫だよ」

無理しなくていいのに。かくいう俺もめちゃくちゃ眠いんだけど。飯食うとどうしても眠くなるよな。

演奏が始まるまであと二時間以上もある。そんなに待ち時間があるなら演奏がはじまる少し前に集合すればいいのに、って思うだろ? 俺も正直思うわ。
そうもいかないのは、団体ごとにリハーサル室とステージを使える時間が決まってるから。それが午前にあって、演奏本番は午後、ってか夕方くらい。

今まで何度もやった曲だし、直前に練習しなくても吹けるといえば吹けるけど、確認はしておきたいし。あと、打楽器の出し入れとか、運ぶの手伝いたいし。

こうしてボーっとして待ってるくらいならユーフォ吹きたいけど、その辺で吹いたら近所迷惑になる。
つか、二時間もあるなら俺も寝れば? って思うだろ? 寝ていいんだったらとっくに寝てるよ、りっちゃんと一緒に今頃夢の世界でランデブーしてるわ。できないからこうして頑張って起きてるわけで。

今寝たら唇むくむんだよな……。ちなみに寝不足でも唇むくむ。むくむと思うように吹けないんだよ。
りっちゃんはそれが関係ないパーカスだから寝ても大丈夫。なんだけど、寝れない俺に気ィ遣って頑張って起きてくれてるってわけ。りっちゃんマジ天使。

「まだ時間あるし寝なよ。時間になったらちゃんと起こすから」
「……ん、じゃあ、お願いね」

ぽんぽんと軽くりっちゃんの頭を撫でると、ごめんと言いながら俺によりかかってりっちゃんは寝てしまった。
すぐ隣の寝息に俺の心臓が速くなっていく。寄りかかられた肩と腕から伝わるりっちゃんの体温に幸せになる。

眠いなら俺に気ィ遣わないで寝て欲しかったのはほんとだけど、さて、俺は残り二時間をどうやって過ごそう。
譜読み……をするにも楽譜が入ってる鞄はリハーサルの時に邪魔だからって楽器倉庫に置いてきてしまった。ゲームも朝急いでて置いてきちゃったしなぁ。

なにもすることがないというか、この状態じゃそもそもなにもできなかった。かといってこのままじっとしてたら確実に寝る。りっちゃんの寝息に誘われて絶対に寝る。でもそれは許されない。

俺、今、めちゃくちゃ幸せだけど、めちゃくちゃ困ってる。

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