▼ リコと鈴々依
パーカッションは、ドラムをやる人、鍵盤をやる人、ティンパニをやる人etc……がある程度固定されていくらしい。まあ、パーカッションって一言で言ってもさっき言ったようにいろいろあるわけだから、そうなるよね。高校から吹奏楽始めたわたしには、よく分かんないけど。
で、鈴々依は本人曰くティンパニが得意で他はダメらしい。ドラムとか大変だし目立つから恥ずかしいみたいなことを前に言ってたけど、ティンパニも変わらないというか、曲の中での存在感は圧倒的だと思う。特に盛り上げるところとか。あれすごいよね、管だけじゃ絶対あんなに盛り上がれない。
「そういえば鈴々依はさ、気が付いたらティンパニ専属になってたの?」
「うーん、そうかも」
あれは大体自然とそうなっていくもの、って猫柳も言ってたっけ。……そんなわたしも、一発でマウスピースが鳴らせた、それだけの理由でクラになったんだけどね。特に希望もなかったからまあいいけど。
「でも私、ティンパニやりたかったから、なれてすごくうれしかったの」
「そんじゃよかったじゃん? やっぱかっこいいから?」
ちなみに、ティンパニを叩いてる時の鈴々依はギャップがすごい。マレットもったら人格が変わるみたいな。初対面でも普段も大人しい印象だったから、初めて鈴々依のティンパニ聞いた時は衝撃的すぎた。思わず振り返っちゃったもん。
「それもあるけど……だって、ティンパニって四つ使うじゃない? だから四人の王子様に囲まれてることになるでしょ?」
確かに楽器に名前つけてかわいがったり、擬人化したりする人はいるけどさ……あーあ、完全にスイッチ入っちゃったよこの子。昼休みが終わるまでに戻ってくればいいけど。