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 有牛と響介

「この間茅ヶ崎くん――あ、連くんがアイ・リメンバー・クリフォード吹いてたんだけどさ」

 え、何それ、超聞きたかったんだけど。
 という私情は今はさておき、その話には続きがあるようなので相槌を打つだけにしておく。

「俺もいつかは吹いてみたいなーと思ったあたり、やっぱり自分って中途半端だなぁと思ってへこんだんだよね……」

 倉鹿野は中学時代、金管楽器を転々としていたらしく、金管に関してはオールマイティだったりする。プラス、もともと優柔不断なのもあって、高校では何の楽器にするか、高一の時かなり悩んでたような覚えがある。

「なんでもできるっていいじゃんって言う人もいるけどさ、俺からすると有牛みたいにトロンボーン一筋! みたいな人のほうがすごいと思うし憧れるんだよね」

 まあ中学から今までやってるけど、ボントロ一筋できたわけじゃないけどね。俺も中途半端にいろいろさわったことはある。

「でも、倉鹿野が一番好きなのはホルンなんだろうなって思うけどね」
「そ、そう? ……なんで?」
「一番食いつきがいいのがホルンの話だから」

 本人には自覚がないのか、倉鹿野はきょとんとした表情で俺の顔を見つめる。

 吹部だから音楽の話、特に吹奏楽の話をすることはよくあるわけで、その中でこの曲はどの楽器がおいしいとか、そういう話をよくする。そんな時、ホルンがおいしい曲だと嬉しそうなのが倉鹿野だし、こっちがホルンおいしいよねって言うと嬉しそうに、そうそう! って目を輝かせる。高一の時、悩んで悩んでやっぱりホルンにするって決めたのも倉鹿野の意思だし、なんだかんだで倉鹿野が一番好きなのってホルンだと思うんだけどね。

「そ、そうかな……?」
「ホルンが楽しい曲やる時は嬉しそうなくせに」
「だ、だって、吹奏楽のホルンって基本目立たないからさ……」

 ほら、やっぱり嬉しそうじゃん。

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