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 朔楽と楠瀬

「誕生日おめでとう朔楽くん」
「あ、う、うん……? ありがとう? おはよう?」

 こんな早い時間に誰だろうと思って出てみたら楠瀬くんで、挨拶より先にそれを言われた僕は、さっき起きたばっかりという状況も相まって、戸惑って何を言ったか半ば分からなかった。

「というわけで朔楽くん」
「うん?」
「スイパラ行こう」
「へ? スイパラ? ……なんで?」
「誕生日だからおごるよ」

 そんなおごるなんてとんでもない、と手をぶんぶん振ったら楠瀬くんに手首をがしっと掴まれて、そう言うと思った、と僕の肩をぽんと叩いた。
 だって、春休みだからってただでさえ忘れられやすいのに、しかも楠瀬くんは日付が変わってすぐに祝ってくれたし、さっき面と向かっておめでとうって言ってくれたし、それだけでもうれしいのに。

「休みだしどっか遊びに行こ」

 おまけに今日は部活が休みだ。部活があると合奏前に誕生日に関する曲をサプライズで演奏するのがうちの部の恒例なんだけど、今年はあいにく土曜日でそれもない。だから久しぶりに遊びに行きたいのもケーキが食べたいのもやまやまだけど。

「それともカラオケがいい?」
「カラオケかぁ……それもいいなぁ」

 まあ自分は音痴だからあんまり歌わないけど、たまに行きたくなったりはする。それに、楠瀬くんとは何度か一緒に行ってるし。でも、両方行きたいって言って両方おごるよってなったら申し訳なさすぎるから、どっちかにしなくちゃ。

「じゃあ独断でカラオケにしよう。それなら朔楽くんもいいでしょ?」
「……う、うん……でも」
「一年に一回なんだからさ。……ね?」
「……じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとう、楠瀬くん」

 カラオケなら、たぶんスイパラよりも安いから、僕の精神的負担は減る。それでもやっぱりおごられるのはすごく申し訳ないけど、たまにはお言葉に甘えようと思う。そして、楠瀬くんのお誕生日に、何かお返しができればな。





2017/4/1 朔楽誕

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