SSS置き場 | ナノ


 朔楽と鵜浦

「金管ってなんなんですかね? ずるくないですか?」
「えっ? な、何が?」

 休憩中、急にうららく――じゃなかった、鵜浦くんがそんなことを言い出したのでびっくりして思わず肩が跳ねた。
 金管は音量があるからうらやましいなぁ、ずるいなぁとは僕も何度か思ったことはあるけど、鵜浦くんの言う"ずるい"はなんなんだろう。

「まあオレも中学ん時は金管だったんでオレが言うのもなんなんですけど」

 そう前置きして、鵜浦くんは続ける。鵜浦くん、中学の時はトロンボーンをやっていたらしい。

「木管がこんな大変なことしてるのに、金管ばっかり目立つとかずるすぎですよね」
「ああ……確かにね」

 僕がたびたび感じていたことと同じことを鵜浦くんも感じてたようで、思わず何度も頷いてしまった。
 金管が音を張り上げている裏で、木管は十六分音符、はたまた六連符や七連符、三十二分音符で頑張っていたりするのだ。でも、木管は金管と比べると音量が出ないから、ただ演奏してたら気付かない人も多いんじゃないかな。……たぶんだけど。

「改めて木管ってすげーなって思いました」

 それがすごいのかどうかは、今までフルートしかやったことがない僕にはよく分からないけど。

「でもユーフォも木管と同じ動きしてたりするんですよね」
「へー、そうなんだ。ユーフォって万能だね」
「そうなんですよ。ていうか吹奏楽じゃ一番おいしい楽器だと思うんですよね、ユーフォって」

 ユーフォのすごさは、木之下くんがよく熱く語ってるから、やったことのない僕でもなんとなく知ってる。

「うら――鵜浦くんってユーフォ志望だったの?」
「え、な、なんでそうなるんですか?」
「いや、ユーフォのこと詳しいから……なんとなく」
「やだなぁ、鳩村先輩ってば、オレは中学ん時トロンボーンですって何度も言ってるじゃないですかー!」

 まあ仮にフルートだからってクラリネットに詳しくちゃいけないとか、そういう決まりはないし、自分がやってる楽器以外にも詳しい人は実際何人かいるから別にどうこう言うあれではないけど、鵜浦くんってユーフォについて詳しいなぁって時々思ってたんだよね。

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