SSS置き場 | ナノ


 千鳥と鴨部

「やっぱり大編成は憧れるな」
「なんや千鳥、うちが嫌になったんか」
「いや、それは違うけど……」

 時々合同演奏をするたび思ってしまう。やっぱり大編成だと音の厚みや迫力が違うから、そこが少し羨ましいと。うちは小〜中編成だからな。それを言い訳にするわけでもないし、うちの吹部が嫌いになったわけでもないけど、
 同じ曲で、小編成用に編曲されたものもある曲はあるけど、大編成用のと聞き比べると、やっぱり大編成用のほうがいいなと感じる時もしばしばあるのは否定できない。

「自分は嫌やけどな。うちの部長のほうがなんも口出ししてこーへんから楽やわ。あの部長やったら吹部続けてへんと思うで」
「まあそこは熊谷だからな」
「やから続けられてるようなもんやし」

 鴨部があまり部活に来ないのは、勉強が忙しいかららしいが、本当のところはどうか分からない。けど、そういう家もあって受験勉強に専念させたいから、または本人がしたいからという理由でやめる人も吹部にはいたりするらしい。大会やイベント前は本当に休みもなければ朝から夜までみっちり練習だから、理由は分かる。

 で、まあ、人の家のことにあまり口を突っ込むのもあれだから、できればなるべく顔を出してほしいのが本音だが、俺もその辺は熊谷と同じくノータッチだ。

「他校と比べたらうちの吹部のほうがまだクセのある奴少なくてやりやすいやん?」
「まあそれはそうかも……だけど、うちの吹部も人のこととやかく言えないと思うけどな」
「鳩村くんとうららくんはいじってると楽しいしな。うららくんは慣れてるけど、鳩村くんはおもろすぎてついいじってしまうわ」
「……ほどほどにしてやれ」
「他校よりはましやろ。クラとかなんかすごかったやん。地獄がどうとか聞こえたで。なんのことはか知らんけど」
「ああ、うん……あれはなんでもない。空耳だ空耳。楽譜が黒くてな、そういうわけだ」
「今度の練習クラのパー練に混ぜてや。楽しそうやったやん。にぎやかで。……せや、来週はセクション練習にしたろ? な?」
「な? じゃない」

 今合同練習してる学校の吹部も、なかなかに個性派ぞろいだしな、とは心の中で言っておく。そっちはそっちで楽しそうというか、楽しんでるんだろうし。……多分。

 まあ、大編成が羨ましいとは時々思ってしまうけども、小編成はメンバー全員で音楽を作ってる感じが好きだし、そもそも比べるものじゃないよな。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -