SSS置き場 | ナノ


 朔楽と楠瀬

 まだ太陽が出ているうちに帰るのはいつ以来だろう。

「他になんかあったっけ」
「うーん……こうもりとか、ちきゅうまわり? だっけ? とか?」

 そして、学校帰りにコンビニ以外に寄り道するのも。

 久しぶりに部活が早く終わった日の帰り道、楠瀬くんの提案で僕たちは公園にいた。楠瀬くんのことだから、てっきりベンチで少し寝たいとでも言い出すのかと思ったら、まっすぐ向かったのは鉄棒。なつかしいと言いながら、普段のいつでもどこでも寝ている楠瀬くんからは想像できないくらいにいろんな技をやっていた。

「朔楽くんさ、小学生の時、逆上がりできた?」
「一回だけ。鉄棒のテストがあった時に、できなかったらできるまで居残りって言われて、居残りしてなんとか一回だけ。その時だけかな」
「あ、同じだ。ボクもテストの時だけ。体育の実技テストってなんの意味があるんだろうね。なくていいよね」
「……確かにね。筆記だけで充分だよね」

 そう思ってしまうのは、僕が致命的なほど運動音痴だからだ。マラソン大会は常にビリか、運が良ければ最後から二、三番目だし、マット運動をすればマットのないほうに転がるし、バレーをやれば顔でボールを受け止めるし、サッカーをやればボールを蹴ろうとして思いっきり空振りして笑われる。体力テストなんて散々だよ。どれも平均以下。唯一平均に届くのは長座体前屈くらいかな……。

 楠瀬くんが体育を嫌いなのは、体を動かすのが好きじゃないからってだけで、僕みたいに運動神経が悪いわけじゃないからうらやましい。何も榎並さんみたいに運動神経抜群まで高望みはしないから、せめて人並みの運動神経が欲しかった。

「でも朔楽くん、体育の成績そんなに悪くないでしょ」
「その時によるけど……。いい時は筆記テストのおかげかな」
「あと意欲でしょ。ボクなんてできないとすぐもういいやーってなるから大体2だったよ」
「そ、そうなの?」

 そんなにあっさり自分の成績をばらしていいものなのだろうか。どう答えていいか分からなくて、なんとなく逆上がりをやってみる。……結果は、言わずもがな。

 確かに成績表は、テストの結果がすべてというわけではないけど……。楠瀬くんの場合、体育の授業でも堂々と寝てるからある意味すごいなぁって思うよ……。

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