SSS置き場 | ナノ


 鳴海×律(大学生)

「おっ?」

 用事を済ませて店の中をぶらぶら歩いてたら、ウサギのクッションを見つけて無意識のうちに足が止まった。

 目にとまったのはリアルなウサギ――というかウサギの写真がプリントされたミニクッションなんだけど、りっちゃんにあげたら喜ぶだろうなぁ、そう思った俺はまたも無意識のうちにそれを手に取っていた。値札を見れば値段も手ごろで、これなら買えるとまたまた無意識に俺の足はレジへと向かっていた。

 これをプレゼントした時のりっちゃんの反応を想像しながら意気揚々と歩いてたわけだけど、レジまであと数歩というところではたとあることが気にかかり、足が止まった。おそらく俺の姿を見つけてあわててレジに向かってくれたお姉さんにすみませんと軽く頭を下げ、くるりと向きを変える。そして店員の目のつかないところまで行き、頭を抱える。

 最近――いや、りっちゃんと付き合ってからだからそう最近でもないな?――、ウサギグッズを見かけると無意識に手に取ってしまう。理由はもちろん、りっちゃんがウサギ大好きだから。
 値段も手ごろなやつだとついつい買っちゃうんだけど、それもまあいい。りっちゃんの喜ぶ顔が見られれば。

 何が気にかかったかって、ウサギ大好きなりっちゃんのことだから、もう同じものを持ってるんじゃないかと。見つけた時は、りっちゃん好きそう! 喜びそう! しか考えてなくて、いつも会計する直前になってそのことに気付く。

 りっちゃんはやさしいから、同じものを持っててもきっと笑顔で受け取ってくれて、もう持ってるよなんて絶対に言わないだろうけど……。それでもりっちゃんが喜んでくれればいいんだけどさ、でもさ、どうせならまだ持ってないウサギグッズをプレゼントしたいじゃん?
 だからといって、いつぞやに見かけたウサギのラベルのワインや大型の家具なんかは値段が値段で貧乏学生の俺にはいくらりっちゃんのためとはいっても厳しいし、それに、逆の立場だったらそんな高級なものもらっても困るし。

「あっ、ラッピングお願いします!」

 今日も悩みに悩んで、結局買ったのは、かぶっても困らなさそうなウサギがデザインされたボトル。中にカラフルなキャンディが入ってる。キャンディは食べられるし、ボトルはそんなに大きくないから食べ終わったら小物入れにでもできるかと思って。

 会計してる最中も、ラッピングしてもらってる最中も、そして店を出た今でも、逆にボトルはもう持っててミニクッションを持ってなかったりしたらどうしようとかもやもやしてるけど、明日りっちゃんの家に遊びに行くから、その時見当たらなかったらクリスマスプレゼントにでもあのクッションを買おう。

 ……そう考えて、もううだうだ悩むのはやめようって決めたくせに、クリスマスまでに俺の知らないところでりっちゃんが買ってたら、なんてまた考え出す俺は、言われなくてもめんどくさいのは自分でも分かってる、分かってるよ。

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