SSS置き場 | ナノ


 律と奏斗と鳴海と音哉

 この時期の昼休みは、ここだけフルーツパーラーみたいだ、と鳴海は毎日思う。
 二つ向かい合うようにくっつけられた机の上は、広げられたバンダナの上に大きな弁当箱が二つとバナナ一房が占領していた。弁当箱にはそれぞれ、ウサギの耳のように皮を飾り切りしたりんごと、大きな粒のぶどうがぎっしり詰まっている。

「なるみんもねむのんも遠慮しないで食べて食べて」
「俺のもー! このぶどうめっちゃおいしいから!」
「よーし、バナナも持ってけ持ってけーい」
「さすがにバナナは一本で満足するわ」
「だよなー」

 りんごは律の、ぶどうは奏斗の、バナナは鳴海の大好物で、りんごとぶどうは旬がかぶるため、この時期は机の上がフルーツパーラーになる。それぞれの好物は近所にも知れ渡っており、何かと人からもらうことも多く、こうして毎日のように大量の好物を持ってきては、主に昼休みに四人で集まってデザートに食べていた。

 とはいえ、特に律はりんご以外にもデザートにフルーツを持ってくることが多いので、この時期に限ったことではないといえばそうかもしれないが。

「素朴な疑問なんだけど、りっちゃんは青りんごは? 好き? 普通?」
「青りんごも好きだよー。ウサギにする時は赤いほうがかわいいから赤いのをよく食べるけど」
「ふーん。そうなのか」
「ねむのんが僕に質問するなんてめずらしいね」
「……そうか?」

 ちなみにもう少しすると、今度は音哉がみかんを持ってくるようになる。もちろん、三人のように、それはそれは大量のみかんを毎日のように持ってくる。
 去年、ネットごとみかんを持ってきた音哉に鳴海が激しく突っ込んでいたが、鳴海だってバナナを持ってくる時はたいてい一房丸ごと持ってくることがほとんどだから、人のことは言えない。そして奏斗や律にもあげるとはいえ、音哉も鳴海もほとんどそれをひとりでぺろりとたいらげてしまう。

「おとやんはみかん過激派だもんな。オレンジは嫌いなんだよな?」
「いや、オレンジ自体は別に嫌いじゃないけど、みかんって言われてオレンジ出されたらむかつくって話。お前だってバナナって言われてたのに柿の種出されたらむかつくだろ」
「……そりゃムカつくかもしれねーけど、そもそもその二つは間違えないだろ……」

 至極真面目な顔をして音哉が言うものだから、鳴海は思わずむせそうになる。
 以前、鳴海が大量にみかんをもらったから昼休みにあげると音哉に予告していたのだが、よく確認したらみかんではなくオレンジで、直前にそのことに気付いた鳴海が平謝りしたが、数時間許してもらえなかったという出来事があった。

「音哉の気持ち分かる分かる。俺もマスカットは嫌いじゃないけど、ぶどうあるよって言われたのに出てきたのがマスカットだったら、俺は怒りはしないけどちょっとがっかりする。嫌いじゃないから食べるけどさ」
「確かにね。似てるけど違うもんね。そう前置きされて違うものが出てきたら僕もがっかりするなー」

 そんな会話をしているうちに、弁当箱はどちらも空になっていた。バナナは一本残っているが、休み時間か部活に行く前には鳴海が食べてしまうから、帰る頃にはなくなっているだろう。

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