SSS置き場 | ナノ


 連と弾

 幽霊や魔物、妖怪が彷徨う時間帯とされている、草木も眠る丑三つ時――現代の時間でいえば午前二時。

 普段ならのんきに夢の世界にいるはずのぼくとれんれんは、今日は二人でキッチンに立っていた。ぐつぐつお湯が沸騰している音でなんの歌かは分からないけど、鼻歌を歌いながら落とし卵を作っているれんれんの背中を、ぼくはソファに体育座りで座ってぼーっと眺めていた。ただじっとしてると眠いんだけど、それ以上にお腹が空いて気持ち悪い。

 なんでこんな時間に二人で起きて、しかもキッチンにいるかっていうと、ぼくもれんれんも夕ご飯が足りなかったらしくて、お腹が空いて目が覚めたんだよね。何か食べようとキッチンに下りてきたら、ばったりれんれんに出くわしたというわけ。今日はお母さんもお父さんもいなくて、夕ご飯はこれでお弁当でも買いなさいって渡されたお金で買ったコンビニ弁当だったから仕方ないね。

「ほい! 落とし卵いっちょあがりー! よし食うぞー!」
「飲み物は? 麦茶でいい?」
「おっけー! よろしく!」

 食べ物の準備はれんれんにまかせて、ぼくは冷蔵庫に向かう。視界の端で見えた、湯気の立つスープの中に落とされた落とし卵は、いい感じの半熟なんだろうな。箸で割ったらとろりと黄色い黄身がスープに溶け出して――そう考えたらお腹がぐうと鳴った。れんれんの落とし卵って、黄身がちょうどいい半熟でたまらないんだよね。

「いっただっきまーす!」
「いただきます」

 ぼくが腰を下ろして箸を持ったのを確認して、れんれんは小学生の給食よろしく元気にそう言うと、早速麺をスープにつけて、音を立てて豪快にすする。ぼくも麺をスープにつけて、早速一口。ちょっと濃いめに作ったみそ味のスープに半熟の黄身を絡めると最高においしい。……表面に浮いているネギの大きさが、おもしろいくらいふぞろいなのはさておき。

「ごちそうさまー! あー食った食ったー!」
「そのままそこで寝ないでよね。まだ後片付け残ってるんだから」
「あー……そうだった……めんどくせー」

 一足先に食べ終わったれんれんがごろんと大の字で横になったから、一応言っておく。おいしい落とし卵を作ってくれたのはれんれんだけど、麺を茹でてスープを作ったのはぼく。インスタントだけどさ。

「ごちそうさまでした」

 人にそう言っておきながら、ぼくも食べ終わったら本格的に眠くなってきた。このまま睡魔に身をゆだねて、朝にまとめて片付けるっていう手もあるけど、そしたら朝の自分が今の自分に怒りを覚えるのは目に見えている。

「夜食ってさー、なんでこうも美味いんだろうな」
「なんでだろうね」

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -