SSS置き場 | ナノ


 鳴海×律(大学生)

 怖い夢を見た。

 そんな幼稚な理由で、深夜三時という変な時間に目を覚ました僕は、ベランダでぐすぐす泣いていた。

 隣で寝ていたなるみんを起こせば、理由なんて聞かずにやさしく僕を抱きしめて、僕が落ち着いて眠るまで抱きしめて頭をなでてくれるんだろうけど、なるみんは連日のバイトで疲れてる上に、最近あんまり会えなくてさみしいからという自分勝手な理由でなるみんの部屋に押しかけた以上、迷惑はかけたくなくて、だから声が届かないであろうベランダでこうして泣いていた。

 それなのに、声が聞こえたなるみんが心配して様子を見に来てくれないかな、なんて心のどこかでは期待している自分がいる。けどやっぱりなるみんには迷惑かけたくなくて、でもやっぱりなぐさめてほしいとも思う。
 だからなのか、なかなか止まってはくれなくて、涙と鼻水を拭いたTシャツはぐしょぐしょだった。なるみんが気付く前に落ち着いたら、着替えてから戻らなくちゃ。そうしないと、起きた時に結局ばれちゃうなぁ、なんてほら、また。

「ど、どうしたの、りっちゃん」

 そんなことばっかり考えてたら、とうとう本人が現れて、もしかして泣きすぎて疲れて僕はとうに夢の中にいて、つまりはなるみんのことを考えすぎたあまり幻覚を見ているのかも、なんて、もう少しで過呼吸になりそうな苦しい呼吸の中で思ったりもしたけど、気が付いたらなるみんに必死にしがみついていた。

「こ、こわい、ゆめ、みて」
「……そっか」
「それ、それで、ね、ねら、ねられなくなっちゃって、それで、あ、は、はずかし」
「大丈夫だよ。そういう時は、起こしてくれていいんだからね?」

 ほら、やっぱりなるみんはやさしい。怖い夢を見て、それで泣いてるって言っても笑ったりしない。だからついつい甘えたくなっちゃうんだよ。

「俺にできることっつったら、これくらいしかないけど……」

 そんなことないよって言いたいし、ごめんねも言いたいし、ありがとうも伝えたいけど、今は頭の中もぐちゃぐちゃだし、それ以前に言葉にならないから、寝て起きてすっきりしたら言わせてほしい。今はこのやさしさに甘えていたいし、なるみんの腕の中で幸せな夢を見てもう一度眠りたい。

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