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 音哉×奏斗←和希

 最近、合歓木センパイがうざい。……まあ最近に限ったことでもないけど。

 先週だか先々週だか、猫柳先輩と一緒に映画を見に行ったらしく、その映画がかなりおもしろかったらしくて部活中も二人、もしくはプラスうさぎ先輩と木之下先輩で未だに盛り上がっている。今もそう。

 一緒に映画に行くのも、同じ話題で盛り上がれるのもうらやましいというか、むかつくというかなんだけど、それ自体はまあいいとして、猫柳先輩が熱く語ってる時に合歓木センパイがちらちらちらちら俺に笑顔を向けてくるのがとにかくうざい。ほらまた。

 合歓木センパイの言いたいことは分かる。分かりたくないけどめちゃくちゃ分かる。猫柳先輩とデートしてきたのうらやましいだろ、とか、お前はこの映画見に行けないから話題に入れなくて残念だったな、とかその辺だろどうせ。

 二人がなんの映画を見てきたかというと、年齢制限があるような映画じゃなくて、子ども向けアニメの映画なんだけど、高校生にもなって子ども向けアニメを見るのは俺は抵抗があるって話を前にしたから、合歓木センパイがあんな勝ち誇った顔してるってわけ。そもそも年齢制限があるやつだったら、R18は無理だし、R12やR15だったら俺もクリアしてるわけだしな。

「音哉、さっきから和希のことちらちら見てるけど、どうしたの?」
「ん? あほ毛立ってんなーって」
「あ、ほんとだ」

 合歓木センパイが俺を見てることに気付いたらしい猫柳先輩が突然こっちに振り返ってどきっとしたけど、上手く言い訳されて余計にむかつく。俺の許可なしに勝手に立った髪の毛もむかつく。ふざけんな。
 でも、猫柳先輩が「俺とおそろいだー」って無邪気に笑ってるのを見ていろいろどうでもよくなってたら、頭に衝撃が走った。何事かと我に返ると、目の前に合歓木センパイ。

「自分じゃどこがそうなってるか分かんないと思って直してやったぞ」
「わざわざご丁寧にありがとうございます、合歓木センパイ?」
「いーえどういたしまして?」

 そう言って、にっこり、それはそれはいい笑みを浮かべると、合歓木センパイは「トイレ」と言って去っていった。本当にトイレに行くつもりはなくて、俺から猫柳先輩を引き離すためだけに適当に言ったんだろうけど。
 猫柳先輩がドアを閉める直前にやっぱり二人って仲いいよねって言ったのが聞こえた気がするけど、気のせいだよな。否定したいけどなんで仲が悪いのかって聞かれたら上手く答えられそうにないし、そう思われてたほうがいいのかもしれないけど、それもそれで嫌だ。

「猫柳がおもしろいおもしろい言うから、あたしも見に行こっかな。気になってきちゃった」
「あ、私も見ましたけど、よかったですよ」

 おもしろいから見に行きなよ、とは俺も猫柳先輩に何度か言われてるし、それに今年のは特に面白いってみんな言ってるし、気になるから見てみようかなとは思うんだけど、見に行ったら行ったで今度は「俺は二人で見てきたけどな」とでも言うんだろうなと思うと、やっぱり行きたくない気もする。

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