SSS置き場 | ナノ


 山吹と理澄

「なんでおれ、また吹部になんて入ったんだろ」

 ため息交じりに本音をこぼすと、事情を知ってる小虎は苦笑いをした。おれがなんで高校でも吹部に入ったかって、まあそれは自業自得なんだけど、今日は調子が悪くて源内先生と榎並先輩に注意されっぱなしで疲れてて、適当になんか吐きたくなった。

「吹部って運動部以上に体力使うし大変だよね。特にこの時期は」
「これで文化部とかありえねーよな……」

 吹部に土日なんて関係ないのはいつものことだけど、特に大会がある夏と冬は完全下校時刻すら関係なくなる。帰る頃には当然吹部以外の生徒はいないし、音楽室と職員室以外に電気がついてないしで軽くホラーだったりする。みんなめんどくさがって廊下の電気をつけないから、小虎と間違えて羽柴先輩に「おい」とか声かける事件が発生するんだ。今日はとことんついてない。

「明日も朝練あるしね」
「朝練といえば、倉鹿野先輩とか千鳥先輩とか、何時に来てるんだろうな……。この間いつもより少し早め行った時も練習始めてたし」
「倉鹿野先輩は家が近いからって言ってたけど、先輩たちってみんな来るの早いよね。みんながみんな家が近いわけじゃないだろうし、すごいよね」

 おれだって朝練が始まるぎりぎりの時間に行ってるわけじゃなくて、結構余裕を持って行ってるはずなんだけどな……。でも先輩たちはほぼ全員もう来てるんだよな……。もしかして学校に泊まってんのかな。じゃなきゃありえねーってほんと。

「しっかし、これから家に帰って、飯食って、風呂に入って、寝て起きたらまたすぐ楽器吹かなきゃなんないのか……」
「そうだねー……そう考えるとしんどいね。とりあえずアイスおごるから、明日からまた頑張ろうよ」
「……悪いな」
「いいっていって」

 アイスって聞いたらちょっと元気が出た気がするおれってなんて現金なんだろう。まあ今日は暑いというか蒸し暑いからな。誰だって食べたくなるよな。

 今日みたいになんで吹部になんて入ったんだろう、と思うことは時々あるけど、入っちゃったもんは仕方ないし、今みたいな大会前の練習はしんどいけど、やるなら頑張りたいっていうか、いい結果残したいなとは思うんだよな。……自分でもよく分からん。

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