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 ひなと×真夏

 テスト期間が終わってあとは夏休みを待つだけだっていうのに、俺はいまいち気分が下がったままでいた。まあ夏休みになっても、課題を除いても勉強からは逃れられないし、旅行に行くとか予定があるわけじゃないから、それほど楽しみでもなかったりするんだけど。でもテストの成績は現状維持できてたから、それは嬉しいはずなんだけどな。

「真夏は夏休みの予定って何かあったりする?」
「今のところ特にはないです。会長は旅行に行ったりとかするんですか?」
「しないよ。行きたいけど」
「え、しないんだ……。てっきり毎年外国に旅行してるのかと」

 真夏も例外じゃなく、俺の家は金持ちってイメージらしく、つい最近まで俺はカップラーメンやコンビニ弁当なんて無縁だと思ってたらしい。どっちもよくお世話になってるよ。

「でも旅行行きたいな。最後に旅行行ったの、小学三年生だったし」

 とはいえ、うちの家族は仲が悪いわけではないけど会話が少ないし、両親は口を開けばほぼ成績の話をしだすし、兄貴には彼女ができたことがばれて疎まれてるから、今旅行に行っても以前のように楽しいのかという。小学生までは楽しかったんだよ。兄貴とも仲良かったし、両親も成績のことで口うるさく言うことはなかったし。たまに家族で集まって一緒にゲームする鳥海家が羨ましい。

「夏休みに旅行に行く予定でもあれば、テンションも上がるのかもしれないけどな」
「なんかあったんですか?」
「いや、特に何もないんだけど、テストが終わったはずなのになんか憂鬱なんだよな」
「梅雨だからじゃないですか?」

 あ、なるほど。そうかもしれない。ここのところ毎日雨だしな。梅雨が明けて本格的に夏になれば、気分も晴れるかもしれない。

「気分が沈む時、真夏はどうしてる?」
「うーん……おいしいもの食べるかなぁ」
「真夏らしいな。でも、確かにおいしいもの食べると元気になるな」

 そういえば、真夏に雨嫌い? って聞いた時、おいしい作物が育つには雨が必要だから嫌いじゃないって答えが返ってきたっけ。おもしろい答えだよな。思わず笑っちゃったよ。

「会長にとっておいしいかどうかは分かんないけど、最近はまってるクッキーどうぞ」
「……これ食べたら勉強頑張れそうな気がする。ありがとな」

 もしかしたら、最近のもやもやの原因は雨じゃなくて、最近真夏と会話してなかったかもなと、真夏からもらったクッキーを食べながら思った。

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