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 源内先生と観田先生

「観田先生、昨日の合奏でまた指揮を振らなかったんですか!?」
「あ、源内先生。おはよーございます」

 朝、挨拶もなしにものすごい剣幕で怒鳴り込んできた源内先生に、観田先生はのんきに挨拶を返す。
 源内先生がかっかしているのはいつものことだからという慣れと、生徒に「ななちゃん先生って呼んで」などと友達感覚で言うくらいに、観田先生はお気楽な性格だから。そんな観田先生に、尊敬のような、呆れているような、いろいろな感情がこもった視線を数人が送っていることを、本人は知らない。

「どうして貴方は指揮を振らないんですか! 振る時だってもう少し真面目にやってください!」
「えー……そう言われても……。だって、指揮なんて飾りじゃないですか。特にポップスは俺が振らなくたってドラムが引っ張ってくれるわけですし……。うちのパーカスしっかりしてるし、俺が振るよりみんなにまかせたほうが曲になりません?」

 観田先生ににこにこと笑顔で言われると、なんだか怒るのも面倒になってくるのもいつものことだ。ため息をつくといささか眉毛の角度をゆるめて、源内先生は姿勢を正す。

「そういう人もいますけどね……」
「でしょー?」

 形として指揮は振るけれど、テンポはリタルダンドやアッチェレランドなども含めてドラムにすべておまかせという指揮者も確かにいる。

 本人が言うように、それはポップスだけで、やむをえずコンクールの曲の指揮を頼んだ時には、テンポがぶれることがあっても最初から最後まで指揮を振ってくれるのだが、マーチになると怪しい。今年の課題曲の「マーチ・スカイブルー・ドリーム」なんて、スネアの休みがないから、トリオあたりで無意識に手が止まっているのではないだろうかと源内は思う。この曲はテンポの変化が一切ないので、パーカッションがしっかりしていれば通らないこともないのかもしれないが。

「ていうかそもそも俺、指揮者じゃないですしね」

 指揮と指導は源内先生で、観田先生は顧問という立ち位置だ。源内先生がどうしても部活に来られない時に観田先生にお願いしたのが観田先生も指揮を振り始めたきっかけなので、それを言われると反論できない。

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